悪徳令嬢に転生したのに、まさかの求婚!?~手のひら返しの求婚はお断りします!~
騎士団長代理、来る 5
その日の夜――
眠る支度を終えたアリシアが、ベッドに上体を起こして本を読んでいると、カモミールティーを持ったジーンがやってきた。
カモミールはリラックス効果があり、神経が高ぶって眠りにくいときなどに効果がある。
ジーンの強張った表情と、手に持たれたカモミールティーを見て、国王の手紙のことを聞いて心配してきてくれたのだなとアリシアは理解した。
アリシアは本を閉ざすと、ベッドから出てソファに向かう。
ジーンに一緒に飲みましょうと告げると、彼女の表情が少し和らいだ。
さわやかないい香りのカモミールティーに癒されていると、ジーンが「フリーデリック様に聞きましたわ」と口を開く。
「陛下からお手紙がきたと。……アリシア様はずっとこの地にいましたのに、どうして疑われるのですの?」
その問いは、アリシアに向けての問いではなかった。ただ自問する問いに、アリシアが小さく微笑む。
どうして――、アリシアも今まで何度も思った。
「陛下はわたしが嫌いみたいですわね」
「そんな理由!」
「別に、今まで何度もあったことだから、手紙の内容についてはそれほど驚きはしなかったのですわ」
ふーっとまだ熱いカモミールティーに息を吹きかける。
「驚いたのは……、騎士団長が、わたしを守ろうとしてくれたことですわ」
ぽつん、とつぶやきを落とせば、ジーンが「当り前です!」と叫んだ。
「好きな女性一人守れないなんて、男として失格ですわ!」
ジーンにとって、フリーデリックは自慢なのだろう。彼女がフリーデリックを大切の思っていることは彼女の言動や行動から見て取れる。
でも――、だからこそ、不安ではないのだろうか?
フリーデリックがアリシアをかばえば、彼は最悪、罪に問われてしまうかもしれないのに。
「……どうして、騎士団長はわたしを好きなのかしら?」
世間のアリシアの評判は散々だ。
フリーデリックとアリシアのかかわりは、この地に来るまで、ただ捕えるものと捕えられるもの、それだけだったはず。
親しいかかわりなど一切なかったアリシアのことは、世間の評価以外に彼が知るはずもない。
正直、好きになってもらえる要素はどこにもないはずだった。
ふーっと、もう充分冷めたカモミールティーに息を吹きかける。
よくわからない。
よくわからないことだらけで、アリシアはフリーデリックを信じるための一歩が踏み出せないのだ。
無意味に、ふー、ふーとカモミールティーに息を吹きかけ続けるアリシアに、ジーンは困ったような笑みを浮かべた。
「本当は、わたくしの口から告げるのではなく、本人が告げるべきなのでしょうけれど……」
ジーンはそっと、ティーカップをテーブルの上におく。
「わたくしも、フリーデリック様から聞いたほんの少しのことしか知りません。でも、……お話しした方が、よさそうですわね」
まったく、本当に肝心なことを黙っているのですから、仕方のない方ですわ――、ジーンは微苦笑を浮かべて、ぽつぽつと語りはじめた。
眠る支度を終えたアリシアが、ベッドに上体を起こして本を読んでいると、カモミールティーを持ったジーンがやってきた。
カモミールはリラックス効果があり、神経が高ぶって眠りにくいときなどに効果がある。
ジーンの強張った表情と、手に持たれたカモミールティーを見て、国王の手紙のことを聞いて心配してきてくれたのだなとアリシアは理解した。
アリシアは本を閉ざすと、ベッドから出てソファに向かう。
ジーンに一緒に飲みましょうと告げると、彼女の表情が少し和らいだ。
さわやかないい香りのカモミールティーに癒されていると、ジーンが「フリーデリック様に聞きましたわ」と口を開く。
「陛下からお手紙がきたと。……アリシア様はずっとこの地にいましたのに、どうして疑われるのですの?」
その問いは、アリシアに向けての問いではなかった。ただ自問する問いに、アリシアが小さく微笑む。
どうして――、アリシアも今まで何度も思った。
「陛下はわたしが嫌いみたいですわね」
「そんな理由!」
「別に、今まで何度もあったことだから、手紙の内容についてはそれほど驚きはしなかったのですわ」
ふーっとまだ熱いカモミールティーに息を吹きかける。
「驚いたのは……、騎士団長が、わたしを守ろうとしてくれたことですわ」
ぽつん、とつぶやきを落とせば、ジーンが「当り前です!」と叫んだ。
「好きな女性一人守れないなんて、男として失格ですわ!」
ジーンにとって、フリーデリックは自慢なのだろう。彼女がフリーデリックを大切の思っていることは彼女の言動や行動から見て取れる。
でも――、だからこそ、不安ではないのだろうか?
フリーデリックがアリシアをかばえば、彼は最悪、罪に問われてしまうかもしれないのに。
「……どうして、騎士団長はわたしを好きなのかしら?」
世間のアリシアの評判は散々だ。
フリーデリックとアリシアのかかわりは、この地に来るまで、ただ捕えるものと捕えられるもの、それだけだったはず。
親しいかかわりなど一切なかったアリシアのことは、世間の評価以外に彼が知るはずもない。
正直、好きになってもらえる要素はどこにもないはずだった。
ふーっと、もう充分冷めたカモミールティーに息を吹きかける。
よくわからない。
よくわからないことだらけで、アリシアはフリーデリックを信じるための一歩が踏み出せないのだ。
無意味に、ふー、ふーとカモミールティーに息を吹きかけ続けるアリシアに、ジーンは困ったような笑みを浮かべた。
「本当は、わたくしの口から告げるのではなく、本人が告げるべきなのでしょうけれど……」
ジーンはそっと、ティーカップをテーブルの上におく。
「わたくしも、フリーデリック様から聞いたほんの少しのことしか知りません。でも、……お話しした方が、よさそうですわね」
まったく、本当に肝心なことを黙っているのですから、仕方のない方ですわ――、ジーンは微苦笑を浮かべて、ぽつぽつと語りはじめた。
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