夢の中でも愛してる

狭山ひびき

帰還 2

 夜――

 弘貴はリビングのローテーブルの上にノートパソコンを広げていた。

 壁の時計が示す時間は十二時を五分ほど回ったところだ。

 リリーは三十分ほど前に部屋に下がり、おそらく今は夢の世界だろう。

 日がたつにつれて元気のなくなるリリーは、クロードに会いたくて仕方がないようだった。

(しかし、わかってはいたが、検索件数が多すぎるな……)

 マウスを動かしながら、弘貴は小さく息を吐いた。
 検索エンジンのフリーワードに「夢の世界」と入れて検索してみたが、夢占いだのなんだのといろいろヒットして、うんざりしてくる。

 夢の世界と入れ替わるなんて、常識的に見てあり得ない情報を探しているのだから、そう簡単に見つかるはずもないのはわかっているが、もう一月以上も探し続けて何もヒットしないとは――、さすがに心が折れそうだ。

(でも実際に起こったんだ、何か似たような情報があってもおかしくないだろう?)

 あちらの世界のホフマンの日記を見る限り、ほかの人間も遥香とリリーと同じ体験をしている。少なくとも、こちらの世界に、ホフマンと入れ替わった人間は存在していたはずだ。

「遥香……」

 リリーや遥香ほどではないが、弘貴もあちらの夢を見るようになった。たまに見る夢で、リリーの姿をした遥香は、無理をして笑っているようで苦しくなる。

 手を伸ばせば触れられそうなのに触れられないもどかしさと、目を覚まして隣に遥香がいない現実に、何度絶望したことか。

「絶対に取り戻してみせる」

 弘貴は自分を奮い立たせるように声に出すと、カチッと次のページをクリックした。

 そして、目を見開く。

「――あった……」

 弘貴は半分放心したような声で、そうつぶやいた。

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