夢の中でも愛してる

狭山ひびき

1

週明けの月曜日。

(……やっぱり、風邪ひいちゃったんだ)

課長から、高熱のために弘貴は欠勤だと連絡が入り、遥香はこっそり息をついた。

水族館を出るときには真っ青な顔をしていたし、くしゃみもしていたから心配していたが、予想通りというか、体調を崩してしまったらしい。

(ちゃんと食べてるかな……)

待ち合わせに行くとは言わなかったとはいえ、結果的には待ち合わせ時間をすぎてしまったせいで弘貴は雨に濡れてしまったのだ。じわじわと罪悪感が胸の内に広がって、遥香は心配で仕方がなくなってきた。

キーボードを叩く手を止め、楽しそうに笑っていた弘貴の顔を思い出す。

(……高熱って、動くのもしんどいよね……)

弘貴は一人暮らしだ。熱があるからと誰かが看病をしてくれるわけでもない。

遥香は終業時間前まで悩んだ挙句、食事だけでも持って行ってあげようと、定時後近くのスーパーへ急いだのだった。

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