【旧版】自分の娘に生まれ変わった俺は、英雄から神へ成り上がる

東郷 アリス

第9話 奇跡の光



時はヨメナがドラゴンを討伐するために出かけてたところまで遡る。


俺は夢を見ていた。


そこでは、ヨメナが俺の前を歩いている。
そこで俺は彼女に追いつくために走り出す。


ヨメナ、ヨメナ、ヨメナ!置いてかないでくれ!


でと彼女は、どんどんと前に進んでいく。
いつしか彼女は、俺の前から姿を消した。


一度悲しそうな顔を俺に見せてから。


俺の意識はそこで途絶えた。






「…様!シ…様!シア様!」


「っん?」


俺の意識は、オシエの声によって覚醒した。
俺は悪い夢を見たせいか、少し汗をかいている。


あの時の夢が現実だと、ヨメナが俺の前から消えてしまう。


それだけは阻止しないといけない。
だから今後気を付けていかないと。


そしてオシエの方を見てみたが、一緒にヨメナの姿が見えない。


「あれ、ママは?」


「ヨメナ様は、ドラゴンの討伐のためにストック正門に向かわれました」


俺は、彼女から詳しい説明を受ける。


ウソだろ!?
こんな所にドラゴン?
おかしいぞ。


でも彼女がドラゴンに遅れをとるはずはない。
そこだけは分かる。


だけど何故こんな所にドラゴンが?
嫌な予感がする。


実際、シトレアのその予想は的中する。
でもこれはもう少し後の話。




俺たちは、ヨメナの帰りを待つことだけしかできない。
それが自分を苛立たせる。
その気配に気づいたのか、膝で寝ていたネコは、びっくりして俺の膝から飛び降りてどこかに走って行ってしまった。


その時だった。


「みんな!ドラゴンが街に向かってくるぞ!!」


「なぜだ!?ドラゴンは、討伐しに行ったんじゃないのか!」


「東門の方角からもう一体のドラゴンがこちらに向かってきています!」


「今すぐにこの街にいるすべての冒険者は、至急東門へ集まってください!そのほかの住民の方たちなどは、急いで西門の方へ避難してください!」


俺は焦っていた。


こんなに同時にドラゴンがくるなんておかしすぎる!


でも今の俺は、たかだか三歳の誕生日を今日迎えただけの幼い女の子だ。


俺はその人たちが言った通りに、 西門まで歩いて避難することにした。


「シア様、急いで避難しましょう!絶対に手は離さないでください。シア様の身に何かあるとヨメナ様がたぶんおかしくなってしまいます」


それは俺も頷ける。


俺も死んだのに、また俺が死んだらおかしくなってしまうのは当然だろう。
俺もヨメナが死んだら、たぶん、おかしくなってしまうから。






騒ぎが続いている街中は、物騒としている。


急いで安全なところに避難しようと走りだしているもの。
怖くて泣き出してしまうもの。


他にもいろいろな人たちがいる。
でもそのほとんどが、怯えている顔をしている。
その中でも俺は前世のこともあって、このくらいは慣れている。


しかも俺にはヨメナがいる。
ヨメナがいるから怖くないと言っても過言ではなかった。


そして俺とオシエが西門に向かう途中、俺は一人のおばさんに声をかけられた。


そのおばさんも少し怯えているが、それ以外何もかわった様子はない。
さすがは年長者。


「そんな生き生きした顔をしているけど、怖くないのかい?」


「うん、だって、ョ、ママが私のこと守ってくれるから!」


「そうかい、お母さんが好きなんだね。」


「うん!」


おばさんは、俺が手を握っているオシエのことをお母さんと思ったのか、オシエの方をちょくちょく見ている。


「良かったねぇ。お嬢ちゃん無事を祈っているよ」


俺は手を振りながらそのおばさんと別れた。






そしてそのあと俺とオシエは、しばらくして西門にたどり着かことができた。


「シア様お疲れ様です。西門に着きましたよ」


「うん、わかった…ふぅ…」


そして俺がちょっと安心して一息ついた時だった。


    ドカァーン!!


西門の方から大きな音が聞こえた。


今度は何だ!?


俺は音のした場所を急いで振り向いた。
するとそこからは、大きな何かが西門から街へと今壊されたところから入ってくる。
そしてそれはついに姿を現した。
その姿は、前世で見てきたことがあるから間違えることはない。


「ドラゴン!」


そのドラゴンは、ブレスの態勢へと入る。
そのことをシトレアはドラゴンが来たことに戸惑い、いまだ気づいていなかった。


それよりも、違う場所に考えがいってしまっていた。


何故こんなところにいる。
こっちには来ないはずじゃ?
間違えたのか?
それともこのドラゴンが監視の目を盗んで何かをしたのか?


その時だった。


「シア様!」


オシエはそう言って俺を押し飛ばした。


「えっ?」


俺はいきなりオシエ押し飛ばされた。


その瞬間。


俺のすぐ近くにドラゴンのブレスが放たれた。
そのブレスはさっきまで俺がいた場所、オシエがいる場所も含まれる。


そしてドラゴンはブレスを放つと、この街に興味が無くなったのか、飛んでどこかへ行ってしまった。


そしてドラゴンがいなくなったあとに、俺はやっと正気に戻った。


「っあ……そうだ、オシエは!?ーーいた!」


俺は少し痛む身体を動かしてオシエのもとへ駆け寄った。


「オシエ、だいじょう……オシエ!」


俺がオシエのもとまで近寄ると、オシエの身体は、重度の火傷に見舞われていた。


「うっ………」


これを見てよく分かる。
そう、いややっぱりオシエは、ボーとしていた俺の代わりにドラゴンのブレスを受けてくれたのだ。


そのせいでオシエは、死に至るほどの火傷をしていた。


「くそっ、俺があの時の余計なことを考えていなければ!」


俺の目からは涙が零れだす。
そんなことを言っても、今の俺には何にもできることはない。
ただオシエの身体が冷たくなっていくだけ。


「俺は自分の大切な人も助けることができないのか!?くそ!くそ!」


俺は地面に小さな拳を叩きつける。
当然ながらにその拳からは血がにじみ出る。


「俺はどうなってもいい…だけど、オシエだけは!」


そう叫んだ時だった。


俺の右目がその言葉に反応するように光だした。


「えっ?ーーーっ!」


そして俺は、その光に身を委ねる。


すると俺の背中には、白い翼が現れ、辺りは少しずつ俺から出る白い光で包まれていく。


そしてストック全体がシトレアから出る白い光に包まれた。


その途端、ドラゴンと戦い荒れ果ててしまっていた街が、何事もなかったのように元の姿へと戻っていく。


その白い光は、それだけに収まらなかった。
白い光に包まれた人たちの傷がみるみるとあっという間に治っていく。


もちろん、オシエの怪我も治っていた。
その光景を俺は何とか意識を保ち、確認する。


「良かった…」


そして俺は意識を手放した。


のちにこの白い光は奇跡の光と呼ばれるようになる。
それはシトレアもまだ知らない話。






     ーーーーー
《ヨメナ視点》






ヨメナは、急いでストック正門へと戻ってきていた。
街までは馬に乗ってきたけど、さすがに街中で馬を走らせる訳にはいかない。


私は、シアとオシエといた場所まで走り出す。


懸命に走ってその場にはついたものの、シア
たちはすでにいなかった。
東門よりににあるために、すでに避難したのかもしれない。


私がいる場所には、ドラゴンを討伐する人たちと思われる人たちがよく通る。


そして痺れを切らした私は、ついにドラゴンを討伐しにいくであろう一人の冒険者に聞いた。


「避難した人たちはどこに向かったか知ってる?」


「あ、ああ。西門に向かったって聞いたぜ。それよりお前、俺のーー」


「ありがと!じゃあ!」


「お、おい!」


私は最後まで聞き取らず、急いで西門に向かった。
どうせくだらないことだから。








走ってから何分かたった。
西門に近づくにつれて、避難する人たちを見る機会が増えてくる。
だけど私は、その周りのことを気にせずにどんどん道を進んでいく。


その走り出して何分か経ったその時だった。


ドカァーン!!


西門から大きな音が鳴りひびいた。
そしてそこには、さっきまで闘っていた同じ魔物、ドラゴンがあらわれた。


ドラゴンは大きな雄叫びをあげると、ブレスの構えに入る。


いけない!急がないとシアたちが!


私はさっきよりも走るペースをあげていく。


その矢先、ドラゴンからブレスが放たれた。


その瞬間、西門の一部はそのブレスによってあとかなもなく消したんだ。


その後ドラゴンは、この街に興味が無くなったのか、ストックから飛んでどこかへ行ってしまった。


私はそれを茫然自失となってみていた。


私は首を振る。


そして一瞬固まってしまったが、気を取り直して西門にむかう。


そしてあと少しでたどり着く!と思った時だった。


西門の辺り一帯は白い光に包まれた。


そして消し炭になった場所が奇跡のように、何事もなかったかのように元の姿へと戻っていく。
そしてその白い光は、西門の辺りだけではなく、この街ストック全体をつつみこんだ。
そして私の身体までも包み込んでいく。


「疲れがとれている!?」


私は戸惑いながらもその白い光の発生源まで走って向かう。


その場所まではすぐにたどり着くことができた。
そして私はその場所を覗いてみた。


「シ……ア?」


そこには翼をはやした天使のようなシアの姿があった。


その足元には、白い光に包まれたオシエが倒れている。


「きれい…」


私は思わず言葉に出してしまう。


そしてその白い光が収まると、シアは崩れたように倒れていった。


「シア!」


私はそこで気を取り戻してシアのもとへと駆け寄った。









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