【旧版】自分の娘に生まれ変わった俺は、英雄から神へ成り上がる
第5話 初めてのお出かけ
「うわぁ…すごい…」 
そこは、景色のあたり一面が紅葉並木や花たちで満たされている。
また、その先に見える街並みは、片眼しか見えないため細かなことは分からないが、とても魅力的なことだけはわかる。
風で紅葉が羽ばたき、花が揺れ、とても幻想的でかつ魅力的だ。
そして、庭園の先に続く道なりの両サイドにある木々たち、花たちは、出でくる人たちを歓迎してくれてるかのように見える。
こんな景色見たことない。
ヨメナが花を好きなことは知っていたが、ここまでとは思わなかった。
花だけで、こんなにも心を掴まれるだなんて。
「オシエ、御墓参り用の花束はもう用意出来ているかしら?」
「もちろんです、ヨメナ様。お墓にてお渡しいたします。」
「ええ良かったわ、じゃあ、オシエ、着いたらお願いね。」
「分かりました。」
「さぁシア、行きましょうか。シアは片目みえないし、危ないから手をつないで行きましょうね、」
「はーい!ママ、」
俺は子供のように元気よく返事して、紅葉並木をヨメナと手を繋ぎながら歩いていった。
その後ろにオシエも忘れずについていった。
十分ほど歩くと紅葉並木の終わりが見えてきた。
そして街が見えてくる。
そして紅葉並木を歩ききった俺たちは、街の広場に出る。
「ここは…」
「シアは初めてね。この街はストック。ここはその中でもとても賑わっている広場よ。ストックで祭りなどのイベントがある時はいつもここでやるのよ」
俺は片方の見えている目で、この広場を見渡す。
 広場には露店などがたくさん並んでいる。
楽しく会話するものや、値切り交渉してそうな人や、どれを買うか迷っている人たちもいる。
それを総合的観てもこのストックの広場は、王都ほどではないが賑わっていた。
だが、ヨメナとオシエが言うには、今日の広場はいつもより一段と盛り上がっているらしい。
俺たちはそんな広場を歩いていく。
その広場を歩いている途中、人々の目線が俺たちに向けられていた。
それは当たり前だろう。
この街の人たちは、ヨメナが俺の妻であることを知っているからだ。
それにヨメナは巨乳で美人だ。
しかも数少ないエルフの一人だ。
これで目が引かれないのは無理があるだろう。
「あの方が邪神を倒して世界を救ってくださった英雄の妻、ヨメナ様か?」
「強そうだがなにより巨乳美人だ!」
「後ろのメイドはわかるけど、あの小さな女の子は、誰なんだ?」
「小さな女の子もこの世のものと思えないほど可愛いぞ!」
「ん?、ちょっとよく見るとヨメナ様に似ていないか?」
「ほ、本当だ!ヨメナ様の娘か。一人だと思ったが、あまり寂しそうじゃ無くて良かった!」
ヨメナを心配してくれている人たち、容姿を褒めてくれる人たちがたくさんいる。
少し過度な人もいたが。
俺の容姿をかわいいと褒めるのは嬉しくない。
せめて褒めるならカッコいいが良かった。
そして俺たちは、目的地であるある建物の前までたどり着いた。
そこには、大勢の人たちが押し寄せていた。
うん?ここが目的地だよね?
ってことは、今日は俺の御墓参りだよな?
結構来てくれるもんだな。
並んでる人達は、それぞれ花束やお供え物を手に順番順番俺の墓があるであろう建物に入っていく。
俺のためにここまでしてくれた。
そのみんなの優しさと心遣いがとても嬉しい。
そう思うと目元が熱くなってくる。
俺はヨメナにバレないように、必死に涙をこらえた。
俺たちは順番を待たず、俺の墓があるであろう建物の前まで来ることが出来た。
俺たちは関係者だから順番とか関係なしに御墓参りができるらしい。
俺たちは、ヨメナが入り口の兵士に手紙を見せると、難なく建物に入ることができた。
中には前世の自分、アキレアのであろう大きなお墓が建っていた。
そのお墓は三段に分かれていて、一番下の段にはたくさんのお供えものが置いてあった。
一段目はお墓参りに来てくれたみんなが置いていってくれたものだろう。
二段目には何も無く、三段目には見覚えのある剣が刺さっていた。
その剣は、俺がアキレアとして闘ったときにたくさんの活躍をしてくれた剣、勝利をもたらす剣が刺さっている。
俺たちは段を上がって一番高い段に向かう。
その場に着くとオシエは、無言でヨメナの方へ準備した花束を受け渡す。
その花束を受け取ったヨメナは、勝利をもたらす剣の前で、しゃがみこみ、その剣を見つめる。
 
俺とオシエは、それを無言で見つめる。
剣の近くにある碑には文字が書かれていた。
ヨメナはオシエから受け取った花束をその碑の側へゆっくりとおく。
それと同時にヨメナの目からは涙が溢れ出した。
"敬愛なる英雄 アキレア ここに眠る"
そこにはそう書かれていた。
俺はヨメナの泣いている姿をみて、さっきまで我慢していた涙が我慢出来ずに溢れだす。
本当に良かった。
世界を救うことが出来て良かった。
そして何よりこれを思う。
ヨメナ、一人にしてごめん。って。
だからもう一人にしないから。
そう心に誓いながら。
碑に置かれたその花束は、菊とクリスマスローズといった花で統一されていた。
その花は不滅の愛 、大切な人といういみがこめられていた。
その後しばらくして泣き止み立ち上がったヨメナは、袖で残っている涙を拭いて、俺とオシエに声を掛け、この建物を後にした。
外には、まだ俺のお墓参りのために来てくれた人たちが順番に並んで待っている。
でももう少ししたら穏やかになるだろう。
俺はヨメナと手を繋いで歩き出す。
俺はヨメナに何か残せただろうか。
残せていたらいいな。
残せてないならこれから作らないと。
これからもヨメナを守りたい。
絶対に守りたい。
だって大切な人だから。
どこにいようと。
何をしていようと。
困難にあっていても。
そして死にそうで消えてしまいそうになっても。
君の元へ一番に向かっていきたい。
だって君を失いたくないから。
そう思いながら空を見上げる。
俺の目には、青く透き通っている空が映し出されていた。
自分のすっきりした心のように。
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