声優さえできればいい
第34話 残された時間
二日目のアイバン感謝祭も無事に終了し、それから何日か経ってゴールデンウィークが明け、久しぶりの学校に行く日になった。
そして今は、学校へ向かう最中である。
俺は、学校に向かいながらも、昨日までのゴールデンウィークのことを思い出していた。 
けれど、俺が頭に浮かぶものは、仕事、仕事、仕事。仕事ばっかりだった。
まあ、ゴールデンウィークだけのことではないけど…
この一ヶ月、みんなから見てカノンは、あまり忙しそうにしてないと思っていることだろう。
その通りだ。 
みんなが思っている通りカノンは、そんなに忙しい訳ではなかった。だけど、それは四月とゴールデンウィーク明けのこの時間に限る。
何故そこに限るのか。その理由は単純で、俺が高校生になったためだ。
まあ、もっと簡単に言ってしまえば、最初からいないと、クラスの人たちに馴染めなかったり、最悪、友達が一人もいないという状況に陥らないための処置だ。
そのおかげでこのクラスに俺は馴染んでいると思うし、友達もいる。
スケジュールを細かいところまで調整し、俺の要望に応えてくれた姉には感謝しないとな。
だが、そんな平凡な日々もあと三日で終える。
それが過ぎれば、午後に早退するくらいで済んでいた四月とは違って、一週間に一回か二回、もしくは一回も通えずに過ぎてしまうこともあるだろう。
それくらい忙しくなってしまう。
だからこの三日間、高校という青春を精一杯謳歌しないとな。
その日の俺は、いつもより気合を入れて授業に望んだ。
時間が過ぎてゆくごとに、寂しさを感じながら。
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