声優さえできればいい

東郷 アリス

第31話 カノンが去った後の楽屋にて



「はい、カノン。メイクも終わったし、衣装も大丈夫。行っておいで」


私がステージに行くことを促す。


「うん。でも、姉さん」


「なに?」


「行ってきますのチュウ」


「えっ!?」


「もういいや」


カノンは私に近づいてきて…


「っ!?」


「行ってきます」


そして何事もなかったかのように楽屋から出て行ってしまった。


そして私だけ、私一人が楽屋へ残った。


私の頬には、カノンにキスされた感覚が残っている。そして体が少し火照っている。そして心臓の鼓動もいつもより早い。


こんな時は他にもたまにだけどあった。その時は必ずそんな感じになっている気がする。きりんがカノンになる前はこんなことなかったのに。


「私、どうしちゃったんだろ?」


私はカノンにキスされた場所を手で撫でた。やっぱり、少し頬も火照っている気がした。

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