エルフ始めました。
第35話 エルフ入学!!
「桜も咲き、春の暖かい風が吹き込んでまいりました。さてーーーー」と、校長の話が始まる。
俺はそれをまるで聞いているかのように見せながら、すらすらと聞き流していく。自分の趣向に合わないアニメや、作画崩壊していて全く内容が入ってこないアニメを無心で観てきた俺だからこそ出来た偉業なのかもしれない。
時刻は遡るほど一時間前くらい。車で連れて行かれた場所は、やはり俺の母校である武蔵野高校であった。
近くのコインパーキングに車を止め、姉さんと未玖と手を繋がされ、強制的に学校へと連行されていく。
この学校は立地が悪いため、自転車で登校する生徒が八割から九割と大半だ。
そのためか、道を歩き始めた頃から同じく今日入学する生徒と親が、自転車で通り過ぎていくのを度々目撃した。
そしてそのたびにじろじろ見られていく。両サイドに可愛い姉二人を連れてかつ、極め付きに異端なエルフな俺がいる。
そうなれば嫌でもを目立ってしまっている。ということだろう。
そして学校に着いた時はもっと酷かった。一人が気づくとそれが連鎖していき、やがて全体に広がっていく。
「あの、本当に学校に通わなきゃだめ?」
未玖にそう問うと、未玖はバッグから紙を取り出して俺に「はい」と手渡した。
その紙を手に取った俺は、早速紙を開いて中身を覗いた。
「クラス名簿……?」
「そうよ。そしてエルの名前がここ」
と、指を刺された場所を見てみると、当たり前のように姫咲 エルと記載されていた。
「えーくんよかったね!先生に忘れられてないよ!」
「それは辞めてくれよ姉さん。俺の高校の時の黒歴史を掘り返さないでくれよ……」
でも何故だろう。これほど忘れられて欲しいと思ったのは……
「とりあえず、ここから先は私たち保護者は入れないわ。私たちは先に体育館で座って待ってるわ。さ、姉さん行くわよ」
「え、うん、分かった!じゃあえーくん、また後でね!」
こうしていきなり一人ぼっちにされた俺は、上級生の二、三年生、先生たちにじろじろ見られながら案内をされるがまま教室にいき、担任だという先生に列ばされそのまま入学式という、一通りの流れをこなすのであった。
そして現在に至る。
この校長の話も終盤に差し掛かってはいるが、相変わらず無心?という状況を続けている。
しかし、この状態は校長の話を聞いているのがだるいというだけではない。
見てみろ。俺の周りを。この俺に向けられる多くの目線を。
金髪で普通の人間とは思えないほどの細長いエルフの耳。それだけなのに何故多くの目線が向けられるんだ?
俺だったら……ガン見してるな。うん。これで多くの目線の理由が分かった。
そしてさっきわかれた姉二人はというと……
「すぅ……すぅ……」
て、寝てるし!?
驚きを見せつつも、俺の人生二回目の高校の入学式は、大事にならず?に穏便に過ぎていった。
あの姉二人、許さねぇ……
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