ソウ-剣士としてLegend級冒険者を目指すが、手にしたギフトは謎の魔法?-

チョコとコロン

門出

これは、エルドラードのイグニス王国にいる少年ソウの物語。

朝から剣と剣がぶつかり合う音が響く。

『ソウ、お前はいい剣士になる。』 
『当たり前だ、俺はLegend級冒険者になるんだから。』
『ふっ、そうか、まあそれはあんまこの村以外では言わない方がいいぞ。笑われるから』
『うるさい、俺だってそんな簡単じゃないことくらいわかっている。だけどなるんだ。』

ソウが目指すものは、「Legend級冒険者」になること。

ーLegend級冒険者ー
それは、今現在は存在しない。Legend級の称号をもらったのは、これまでの歴史のなかで一度だけ。それはおよそ、300年前。当時、各国は戦争に次ぐ戦争で、荒れていた。そんな時、立ち上がったのがメルヴェイユだ。元々、当時世界で3人のSランク冒険者の一人として、圧倒的な力を見せ、数多くの活躍をしていたが、Sランクの他の二人と同じ程度の力だったという。そんな中、メルヴェイユは、覚醒したと言われている。そして、その力を使い戦争を止めた。この功績から、Legend級という前代未聞の称号を手に入れた。メルヴェイユには多くの逸話が残っている。姿を見せただけで、兵は戦意を失い、武器を落とす。一振りすれば、地形が変わる、気候が変わる。一国の王以上の権力、人望、金を持っている。などだ。しかし、300年前ということもあり、詳細なところについては数多くの謎が残っている。

普段通りのウォーミングアップを兼ねた模擬戦の途中

『お前ももうすぐ10歳だろ』

俺を今まで親同然に育ててくれたカイザーに言われた。
カイザーは、昔冒険者として活動しており、ソウの両親に一度命を助けられた経験もあり、ソウを育ててくれたようだった。カイザーによると、ソウには苗字があり、本名は『レイオルド・ソウ』だという。ソウはあまり気にしていなく、公式な手続きでは、レイオルドを名乗るようだ。
話が少しそれたが、この世界、エルドラードでは、10歳になると神殿に行き、ギフトをもらう。そんな儀式がある。

ギフト:それは天から授かった才能のようなものだ。基本的にギフトは、貰ったその場で強力な力を発揮するというものではない。才能を与えられるそれだけなのだ。例えば、剣術のギフトをもらった人はもらってない人よりも上達が早まる。まさに才能を貰えるのだ。しかし、そのギフトにはランクがあるギフトや複数もらえる人もいるため、その後の人生を大きく分けるものだ。ランクがあるギフトは基本技能(身体、剣、槍、盾、弓)、基本魔法(火、水、土、風)のみで、剣術であれば『剣術、上級剣術』という2種のランクがある。また、ギフトは平均1.5個程度と言われており、二人に一人くらいは二つのギフトをもらう。三つもらう人もいる。

もう10歳ということをカイザーに言われ、ソウは儀式のことを思い出す。

『そうだな、そろそろこの村から出るのか。』

ソウの育った村は、人口が100人程の村で、子供は20人ほどいるが、ソウと同じ年齢の者はいなかった。

そんな村で、ある日、ソウはいつものように朝は、カイザーとの模擬戦をやり、ランニングをする。昼からは山に行き動物や魔物を狩る。
ちなみに、7歳の頃からカイザーに力を認められ、山へ行くことの許可をもらってから、ご飯のほとんどは、ソウが取ってきたものになっている。
夜は、フラフラになるまで剣の打ち込み、寝る。そんな生活も、もう今日で終わりだった。

ソウはその夜、久々になかなか寝付けない夜だった。いつもはくたくたになってすぐ寝てしまう。今日寝付けなかったのは、別に今日の訓練が緩かったわけではない。明日、神殿でギフトをもらうためにこの村を出ることになるからだ。
今まで、Legend級冒険者になるため、誰にも負けない努力をしてきたつもりだ。しかし、そんな努力をしても、やはりギフトによって大きく運命が変わり、良いギフトの前では力を発揮できないこともあるという。いいギフトをもらえますようにと祈り、と普段は自立していて、なんでも自分でやってしまうソウも今回ばかりは、10歳児らしく神に祈りを捧げ、目を閉じた。

その日は、快晴だった。日課である朝のトレーニングも今日は休みだ。必要な荷物をまとめている。とは言っても、持っていくものといえば愛用の剣、お金、少量の食糧、村長の証明書くらいなものだ。

『ソウ、俺からのちょっとした餞別だ。』
カイザーから渡されたその袋には、金貨が10枚入っていた。

通貨:銅貨、銀貨、金貨、白金貨がある。
銅貨100枚で銀貨。銀貨100枚で金貨。金貨100枚で白金貨。
共通単位として、銅貨一枚を10メルとして表すため、銀貨が1000メル、金貨が100000メル、白金貨は10000000メルとなる。

『こんなに、大丈夫か。』

カイザーとの暮らしは、貧乏だと感じたことは一度もないが、お金に余裕があるという印象は受けなかった。しかし、カイザーは昔腕の立つ冒険者であったという話を村の人から聞いていたから、お金には余力があったのかもしれないが。

『ふっ、子供がそんな心配するな。ましてや、その金はソウが今まで獲っていた動物や魔物の金だ。』
『そうなのか、ありがとう』
『どうせソウは、もうこの村には戻らないんだろ。ソウはいつも頑張りすぎるから、身体にだけは気をつけて程々にな。まあ、Legend級を目指すっていうんなら、生半可な努力じゃダメだろうけどな。』
『うん分かってる。今までありがとな。行ってくる。』

そう行って、ソウは馬車に乗り込んだ。

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