タヒチ探偵局〜罪人どもの異空間〜

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61.戦闘







 男は体勢を立て直して加藤さんを見据えた。その直後加藤さんは鬼の速さで近づき、同じようにパンチを喰らわせる。






 「シュ!!」




 しかしそれは躱されてしまう。





 「あなた、昨日の人に比べたら弱いですねぇ。ふっふっふっ。」




 「はあー?誰が!!」




 加藤さんが再び拳を振るう。しかし、男は逃げるばかりでなかなか一撃が当たらない。




 「ふっふっふっ。当たらなければ意味がないのに。ん?」





 男は気配に気づき咄嗟に身を躱した。




 「おや?」




 それは拳銃の弾だった。見ると優が拳銃を構えている。




 「悪いっすけど、俺らのこと忘れて貰っちゃ困るっすよ!!」




 男が優を見据えている間に加藤さんがまた近づいて攻撃を仕掛ける。




 そうやって肉弾戦は続いた。しかし、男は逃げるばかりであった。





 (これはまずい。昨日と同じように攻撃は交わすだけで一向に攻めてこない。もしや昨日と同じ展開を狙っているのか!?)




 ここまでは昨日無敵さんを連れ去った時と同じ展開だった。




 (しかし、すぐに連れ去ろうとしない辺り、連れ去るには何か条件が必要なのだろう。)




 加藤さんは探りながら拳を振い続ける。




...また躱される。そう思ったその時、




 「ふっふっふっ。滑稽滑稽〜!」




 男は加藤さんの肩を掴むと加藤さんに頭突きを喰らわせた。




 「!?加藤さん!」




 向こうは攻撃してこないと、完全に油断した間の出来事だった。加藤さんは気を失いその場に倒れた。




 「ふっふっふっ。愚か愚か。」




 男が加藤さんに手を掛けようとする。が、それは優の拳銃によって阻止された。




 「はあ、はあ、はあ。次の相手は俺っすよ。」




 優はそう言い放ち男の注目を集める。僕はその間に加藤さんに近づき、救護活動をする。



 「加藤さん!しっかりしてください!死なないでください!...加藤さん!」




 体を揺する。しかし、加藤さんの意識はなかった。




 「加藤さん...。約束したじゃないですか!必ず昨日の奴を殺すって!仇を取るって!」
 




 僕は涙を流して言う。





 「加藤さん、昨日おいしそうに味噌汁飲んでましたよね?もう一度一緒に味噌汁飲みたかったのに。」




 (なんだ?思い出話か?大袈裟な。死ぬ程のダメージはねえよ。)




 男は呆れながらそれを聞いていた。





 「他にも猫が好きって言ってたし、あと筑前煮も好き。他には...」





 (ん?何だ?こいつ本当に悲しんでるのか!?いや、これは..!)




 男は次第に不審感を抱き始めていた。そして僕の顔を覗きこむ。僕は涙を止め冷静に言葉を発していた。




 「...貴様あぁぁぁぁあ!!」




 僕は思わずニヤリと笑う。




 「プログラミング完了。」





 「くっ、くそっ!」




 男はその場で動きを止めた。

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