タヒチ探偵局〜罪人どもの異空間〜

cookie

60.憤怒







 そこにいた男は昨日と同じ笑みを浮かべ僕達を待ち構えていた。





 「ふっふっふっ。やはり、いらっしゃったようですね。」




 黒色の椅子に仰々しく座っている。




 「...やけに余裕そうだね。俺等を待ってたなんて。」




 加藤さんが睨みつけながら言う。




 「あんま無駄な争いはしたくないからさあ、早く返してくんない?」




 「ふっふっふっ。ん?返す?」




 「杏と無敵っていう人。女の子と昨日のおじさんだよ。」




 「ああー!いたなー、そんなの!!」




 男が太々しく笑う。




 「ふっふっふっ。...女の方は殺した。」




 一瞬時が止まった。加藤さんは一度唾を飲み込み、そして震えながら口を開いた。




 「...殺した!?」




 「ああ。どれだけ拷問してもくだらないことしか吐かないからな。...まあ、自業自得だ。おっさんの方は..」

 

 
 男が言葉を続けようとした時、その目の前には加藤さんが迫っていた。男は油断していたのだろう、加藤さんのアッパーをモロに喰らい、椅子から後ろ向きに吹っ飛んだ。




 「加藤さん!!」
 



 「はぁ、はぁ、はぁ、おい、立てよ。お前を今日殺す。」





 鬼の形相を浮かべ加藤さんは男に詰め寄る。男は傷を摩る。すると傷が見事に消えた。




 「ふっふっふっ。素敵なパンチ...。興奮しちゃうなー!」



 男が戦闘モードに入る。




 「人生は...ギャンブルなり!!」






□□□□□□□□□□□□□□□□





 その時、無敵さんはアーテリーの祭壇で縄を解かれた。




 「...5番。無敵大介。」




 目の前の老人に名前を呼ばれる。しかし、彼の前にはベールが敷かれていて顔は見えなかった。後ろにはアーテリーの面々が立ち並んでいる。




 「...お前が元締様か?おう?」




 「...。」




 元締様はそのまま何も言わず右手を地面に向けゆっくり下ろした。すると、目には見えない力で無敵さんの頭は地面に押しつけられる。




 「...おぉぉぉぉぉぉ!!」




 無敵さんは押しつけられる圧力に何とか耐える。その間、アーテリーは全員無敵さんを冷たい目で見ていた。次第に無敵さんの力がなくなり、気づけば口を開けなくなった。




 「...ようやく黙ったか。よし、5番よ。今から貴様の異能力を奪う。」




 元締様の右手の人差し指が伸び、無敵さんのおでこに指先が触れる。無敵さんはそれに抵抗することもなくぐったりしていた。そして、指がおでこに侵入し、無敵さんの脳に触れる。




 「無敵大介。これで貴様はただの罪人だ。このまま何の能力も持たず、誰の役に立つこともなく死ね。」




 元締様は意識のない無敵さんに言い放った。アーテリーは動くことなく蹲る無敵さんをひたすら見つめていた。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品