タヒチ探偵局〜罪人どもの異空間〜

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56.アーテリー







 一方その頃、無敵さんは敵の本拠地にいた。





 「おい!放せい!!このっ!」




 無敵さんは例の汚い服の男に捕まり、手足を拘束されている。





 「おい、くそが!!」




 異能力を放てない。何か特殊な物質で作られている手枷足枷なのだろうか。





 「ふっふっふっ!楽しみですね〜。元締様の元にお連れするのが!」





 「!?(元締様じゃと?)」





 その時、2人のいる暗い部屋の扉が開き、数名の人が部屋に入って来た。無敵さんを捕らえている男はそれに気づくとすぐに畏まり、頭を垂れる。





 「...そんなに畏るな。煩わしい。」




 「はっ!」




 聞き覚えのある声であった。無敵さんは一瞬でわかった。その中に、哀瑠がいる。




 「おい、哀瑠!何のつもりじゃ!!」





 それを聞くとすぐに哀瑠は胸から腕を出し、無敵さんの口を封じる。




 「俺はお前と友達になった覚えはない。我々アーテリーの前では私語を慎め。」




 呼吸をするのも精一杯な程の圧力で押さえこまれる。すると哀瑠の後ろにいた白髪の優男風の男が口を開く。




 「哀瑠さん、可哀想だよ。」




 「!?中将。」




 哀瑠はそれを聞くと腕の力を少し弱めた。優男風の男の正体はアーテリー中将、詩愚馬(しぐま)。




 「ははははは!!そう言って良い人ぶってよう!!まじサイコだぜ!最高ー!!」




 その様子を見て、端にいた男が笑う。顔も体も傷だらけだ。そして何故か上半身が裸だ。彼はアーテリー少将、零(れい)。




 (こいつら、全員アーテリーか?)




 無敵さんは心の中で思った。数えると全員で6人いる。




 「..あの、それで、あの人どうするんですか?」




 気弱そうな女の子が訊く。彼女は少佐、紫苑(しおん)。




 「そうだな、とりあえず放置しておくか。煩わしいが我々が勝手に対処するのはよくない。」





 哀瑠が冷静に答える。そして、その後ろの男の子がそれに続ける。見たところ小学四年生くらいだろうか。




 「うん。そうだね。身動き取れなくすれば問題ないよね。」




 その少年はアーテリー中佐、空雅(くうが)。





 「はははは!じゃあこのままでいいじゃねえか。折角アーテリー全員で来たのによ。」




 「まあまあ、零。今日はたまたま元締様がいらっしゃらないからね。今日は様子見さ。」




 なんか会話が進んでいる。どうやら無敵さんを殺すつもりはないようだ。




 「...しかし、でかしたぞ吐夢。よくぞ5番を連れてきた。」




 哀瑠が汚い服の男を褒める。どうやらそいつの名前は吐夢というらしい。



 「先に褒美だ。...大将。」




 哀瑠の言葉を合図に1番後ろの男性が前に出る。今まで一言も話していない奴だ。大柄のその男の顔は、光で反射して無敵さんには見えない。




 「...。」




 大将は一言も発さず吐夢のおでこに指を刺す。その指はおでこに侵入し吐夢の脳に到達した。


 

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