タヒチ探偵局〜罪人どもの異空間〜
43.交渉
「あ、哀瑠...?」
優は彼の名前を復唱した。
「貴様は何者だ!?」
「そうだな...、言うなれば大佐だ。」
「た、大佐?」
「ああ。」
「大佐って何だ!?」
「...もういいだろう、自分のことを話すのは苦手だ。」
哀瑠はそう言うと胸の太い腕をこちらに勢いよく伸ばしてきた。先程より速い。優はそれを見切って銃口を向ける。
「!?危ない!!」
しかし、その腕は優ではなく後ろの2人に向かって行く。優が一発銃弾を当てる。が僅かながら勢いが下がるだけで腕のスピードは落ちない。駄目だ、間に合わない。無常にも、哀瑠の腕は桔梗を守っている蝶野さんにクリーンヒットした。
「蝶野さーん!!桔梗さーん!!」
優が叫ぶ。あの勢いで殴られて無事なはずがない。優はふたりのもとに駆け寄ろうとした。その時、
「どこを見てるんだ」
「な!?」
後ろを振り返ると哀瑠は優に接近し、胸の腕とは別の、通常の右腕に謎の槍のようなものを持って振りかぶってきた。優は咄嗟に避け拳銃をその棒に向けて撃った。しかし、その槍は銃弾を意に介さず、優に向かってくる。優は慌てて避けるが脇腹にその槍がかすった。
「ぐあああああああ!!!」
それは今まで体感したことのないような痛みだった。雷に打たれたような、とでも言うべきか、かすった部分から電気が走って身体が痺れる。優はその一撃で身動きが取れなくなった。
「これで全員始末した...、ん?」
哀瑠はその時気づいた。彼の腕から伸びた腕が動かせない。後ろの女2人を確実に仕留めたはず。哀瑠は腕の先を見た。そこには男が1人で腕を受け止めていた。
「貴様...。」
「遅れて、すまんのう。」
「!?無敵さん!!」
その男とは無敵さんだった。腕が2人にぶつかる前に無敵さんが全身で受け止めている。
「ちっ。」
「ぐあっっ!」
哀瑠は舌打ちをしてその腕に更に力をこめる。それに比例するように無敵さんが押され、所々から切り傷ができる。
「!?」
無敵さんが全力で受け止めている隙に哀瑠は無敵さんに瞬時で近づき槍で突こうとする。
「はあぁぁぁぁ!!!必殺!破壊突き!!」
無敵さんはその槍を横から殴った。槍の先端が曲がり無敵さんとは別の方向に向かっていった。
「...なるほど。」
哀瑠はそう呟くと元の場所に戻り、胸から伸びる太い腕を閉まった。
「...お前が無敵大介だな。囚人番号5番。」
「!?何故ワシの名前を知っている。」
「元締様が探していたからな。貴様、我々の仲間になれ。」
「!?なんじゃと!?」
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