タヒチ探偵局〜罪人どもの異空間〜
39.死
僕達は桔梗の案内で病院に行った。道中僕達の間に会話はなかった。
「おじいさん...。」
桔梗は時々そう呟いては言葉を詰まらせていた。
□□□□□□□□□□□□□□□
病院について病室に案内される。その中にはおじいさんがベッドに横たわっていた。目を閉じて動かない様子に、僕は改めて彼の死を実感した。
「...何があったんすか?」
優が重苦しい雰囲気を打ち破る様に口を開く。優はともかく、無敵さんも蝶野さんもおじいさんとの面識がないのに来てもらって、急に申し訳ない気持ちになる。
「桔梗、喋れるか?」
「う....うん。」
それはまさに今日のことだった。僕達が自殺対策サークルに向かっていたその時、いつもの様に桔梗は学校に向かっていた。桔梗が家を出る時、おじいさんはいつも通りの様子で見送ってくれたという。不審な点はその時ひとつもなかった。
そして夕方になり、桔梗が帰宅する。
「ただいまー。」
...返事はなかった。たまにおじいさんが買い物に行っていることもあるから、今日はその日なんだろう。そう思って靴を脱いで家に入った時、妙な違和感を感じた。いつもの家じゃない。それは、誰か自分とおじいさん以外の人が家に入った感じだった。そして二階に上がろうと階段に向かって歩いていたその時、
「!?おじいさん!!」
台所におじいさんが倒れているのがふと視界に入った。慌てて駆け寄ったがその時には既に脈はなかったそうだ。
「...外傷はあったんっすか?」
「...お医者さんが言うには、殴られたような跡があったみたい。そして注射跡みたいなのもあったって...。」
桔梗の気持ちが落ち着いてきた。事務所の前で僕達が帰ってくるのをずっと待っていたのだろう。それを考えるとこちらも涙が出る。
「これは、事件の匂いがするのう。」
無敵さんが横たわるおじいさんを見ながら呟く。その後ろの蝶野さんもそれにつられて喋り出した。
「そ、それで、このことは誰かに相談したんでしょうか...?」
桔梗はそれに対し首を振る。
「あんた達も知ってるでしょ。この街に警察みたいな自治組織はいない。みんな、囚人達がその役目を果たしてくれるだろうって、そんな理由で。」
「...さっきアーテリーとヴェインについて聞いた。」
「!?」
僕はつい桔梗に言った。
「桔梗、聞いたことあるか?」
「と、都市伝説でしょ!?名前なら聞いたことあるけど。」
「なんか、さっきその話を聞いたからかもしれないけど関わってるかもしれない。」
それを聞いて桔梗の目からまた涙が溢れ出す。
「...今日は帰って休もう。僕達も、桔梗も疲れてるだろうから。」
僕達は事務所に帰った。桔梗は蝶野さんと一緒に事務所の隅っこで眠った。
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