タヒチ探偵局〜罪人どもの異空間〜
28.本部
サークル本部にはサークル構成員だろうか、十数名の人が正座で輪になって座っていた。全員俯いているので表情はわからない。が、震えている者、微動だにしない者など、少なくともまともな精神状態でないことはわかる。僕達3人はとりあえず空いているスペースに腰掛ける。
それから30分沈黙の時間が続いた。無敵さんは落ち着かないようでずっとソワソワしているし、優は逆に眠っているかのように目を閉じてジッとしている。この時間はキツい。と思っていた瞬間扉がそっと開いた。
「皆さんお集まりのようですね。」
ヨボヨボの老人と男が本部の部屋に入ってくる。老人は優しそうな表情を浮かべている。しかし、1人では足元が覚束ないらしく、杖をついて入ってくる老人を後ろから男が支えている。その男は一番最初に僕に声を掛けてきたあの男だった。老人はそのままゆっくりと入室し、玉座に座った。
「皆様、お顔をお上げください。」
男性の低い声が響く。気がつくと周りは土下座していた。その声を合図に全員顔を上げた。そしてその声がきっかけで優が起きた。しかし、ヒソヒソ声すら言えない厳かな雰囲気で僕達は一言も交わさなかった。
「本日は初めて当自殺対策サークルに参加する方もいらっしゃいます。まずは当サークルについて説明致します。」
男が静かに言う。そこでこのサークルの説明を受けた。
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「なーんか、ちゃんとしたサークルっぽいじゃないっすか。」
そのあとの休憩時間で優が呟いた。自販機でジュースを買っている。無敵さんはお手洗い中だ。
「まあ、確かに真っ当なことしてるっぽいな。まあ、説明を聞いた限りだが。」
男の説明はこうだった。まずこのサークルは自殺願望のある人が集まっているということ。そしてそういった人達が集まって互いに交流し合い、生きていく意味を見出していく。そういうサークルだそうだ。そしてあの老人はそれぞれの悩みや不安を理解し、希望を与えてくれる『救世主様』なのだそうだ。
各日やることはスケジュールで決まっているらしい。今日は座禅の日だそうだ。この1時間程の休憩の後に行われる。
「いーや、ワシは怪しいと思うがな。どう見ても悪徳宗教じゃろうが。」
お手洗いを終えた無敵さんが話に割り込んでくる。
「まあ確かに宗教っぽいんっすけどやってることは良いことなんっすよねー。」
「いや、絶対裏があるはずじゃ。ワシは騙されんぞ。」
無敵さんはベンチに座り腕を組む。確かに双方の意見はわかる。まだなんとも言えないっていうのが現時点の感想だ。
「...2人とも依頼を思い出してください。僕達の任務はこのサークルをぶっ壊すことなんですよね...。あんな手紙が届くってことはまだ僕達の知らない一面があるはずです!」
僕が一応探偵事務所のリーダーとして仕切った時、後ろから声を掛けられた。
「あ、あの...。」
女の人の声だ。振り向くと20代前半くらいの可愛らしい女性がいる。
「はい、なんでしょうか?」
僕が言うよりも先に優が言った。
「あ、すいません、その、もしかして探偵さん達ですか?」
僕の顔は一瞬強張った。
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