タヒチ探偵局〜罪人どもの異空間〜

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16.犬





 僕は優の目隠しを外した。優はただただ目を閉じてしゃがんでいる。




 
 「優、終わったぞ。」





 「太一さん、聞こえてました。さっきの男の声、誰なんっすか。てか、無敵さん大丈夫なんっすか。」





 「詳しい話は後だ。とりあえず、葵の家に戻ろう。無敵さんの治療が先だ。」




 
 「ひっ...。そうっすね。。」





 優は血塗れで虫の息の無敵さんに少し怯えている。2人で彼を担ぎ、そこから一言も喋らず葵の家まで戻った。





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 葵に全ての事情を説明した。





 「...で、その変な奴が手にドラゴン吸収して消えていったんだ。っていうことで、残念だけどミルクちゃんはもう...。」





 「そう...。ありがとう、探してくれて...。」




 
 「あいつ、やっぱり囚人の異能力使って悪いことしてる奴だよな。」





 「うん...。恐らくそう...。」




 
 「そいつ、土地が必要とか言ってましたね。あと、なんか無敵さんのこと知ってるみたいでした。」




 優は窓から外をぼんやり見ながら言った。





 「ああ、そうだな。しかもそいつ黒の長いコート着てたんだよ。暑いのに。なんか怪しいよな。」





 「それは怪しいっすね。」





 「あいつについていろいろ調べる必要がありそうだな。そんで葵、無敵さんの様子は?」





 「今寝室で寝てる...。止血もしたし寝てればよくなると思う...。」





 「そっか、ありがとう!...僕達もちょっと休んでいいか?なんかいろいろ疲れちゃってさ。」





 「いいよ...。でもベッドの空きあと一つしかないけど...。」





 「あ、俺はちょっとだけ散歩してから休みますわ。太一さんベッド使っちゃってください。」





 「え...。そうか。ありがとう。」





 優はそう告げると靴を履き替え外に散歩に出かけた。僕は言葉に甘えて無敵さんの隣のベッドに横になる。無敵さんはすやすや眠っている。今まであんまり休めてなかったんだろうな。そんなことを考えていたのだが、僕も流石に疲れ切っていて気づいたらすぐに眠りに落ちてしまっていた。





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 起きたら真夜中だった。隣の無敵さんはまだ寝ている。僕はどうしても目が覚めてしまってリビングに出た。ソファには優が寝ている。時計を見た。11時。葵も寝ているのだろうか。ふと外の空気を吸おうと庭に出た。すると、





 そこには葵がいた。地面に向かって何かしている。よく見るとお墓を作っている。あの白い犬のお墓。遺体もないのにわざわざ穴を掘っている。どんな表情で作っているのかはわからない。だけどその背中はあまりにも寂しげで声をかけることはできなかった。そういえばこの家で葵以外の住人に会ってない。ひとりぼっちなのだろうか。あの白い犬がドラゴンの背に吸収されているところを思い出してしまった。何とも言えない気持ちになって声もかけないまま寝室に戻った。
ベッドに横になり、目を閉じてひたすら朝を待った。目の前に置かれた現実をただ頭の中で整理することしかできなかった。



 






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