タヒチ探偵局〜罪人どもの異空間〜

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9.依頼






タヒチ探偵局を設立してから1週間が経った。その間特に何もなかった。僕と優は事務所の中で寝泊りを繰り返し、ただ漠然と毎日を過ごしていた。




 「はぁーあ!もう何もやることないっすよー!何の依頼も来ないし!!」




 「まあそもそも僕達のことみんなが認知してないんじゃないか?存在を知らないんじゃ依頼のしようがないだろ。」




 「まあ、そうっすけど...」




 この1週間は張り紙を作ったりして広報活動に努めていた。白樺屋にも何度か協力をしてもらった。しかし、その頑張りとは裏腹にこの事務所にやってくる者はいない。どうしたものか、現実の厳しさにだんだん2人ともモチベーションは下がり始めていた。






 その時事務所のドアが開かれる音がした。僕と優は一斉に振り返る。そこにはショートカットの小さい女の子がいた。





 「あ、あ、君は、、、葵ちゃーん!!!来てくれたんだねー!!」




 優が叫び出す。葵ってどこかで聞いたことある名前だな。あ、そうだ確か優の看守の名前だ。葵は怯えている様子でドアの前から動かない。




 「どぉしたの?あ、もしかして俺に会いに来てくれたのー?」


 

 「はい...囚人の見張りです...もう私の身体触らないで...」





 「ちょっと、その言い方は語弊があるっすよ!!あの時はたまたま指先が触れただけじゃないっすか!!」




 なんかよくわからないけどこの2人にはいざこざがあったようだ。




 「あ...あと探偵さんに依頼したいことがあって....」




 葵が恐る恐る口を開いた。探偵局1人目の依頼人は葵だった。









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 依頼の内容をざっくり言うと、飼っていた犬が逃げたので探して欲しいと言うことだった。それは白いチワワで葵が朝起きた時には既に家から消えていたそうだ。




 「その子...ミルクは3年くらい一緒に暮らしてたんだけど...その...今まで逃げたりしたことはなくて...」




 「ほう、それはちょっと事件の匂いがしますね。太一さんどうします?」




 「そりゃわざわざ来てくれたんだし断る理由がないだろ。よし、その依頼我々にお任せあれ。」




 第一の依頼だ。気合いを入れて行こう。僕と優は葵に家を案内してもらい、早速近辺の調査に当たった。




 葵の家は事務所から結構離れていて周りには森や川がある地区にあった。葵の家は普通の一軒家でまわりは住宅街になっている。森は異様な雰囲気があり、葵が言うには子ども達は絶対森に入らないようにという決まりがあるらしい。一方少し歩いた所にある川は流れが穏やかで釣りやキャンプをしている人もいる。




 「なんか穏やかでいい所ですね。」




 「そうか、なんか森が怪しくて不気味じゃないか?」




 「確かに、あの森は不気味ですね。」



 「...よし、怖いからあの森は後回しだ。まずは聞き込みするぞ!!」




 僕達は葵から簡単な状況説明を受け、一度葵を家に帰した。やはり依頼人の安全は第一なのだ。まずは周囲の家を巡り聞き込みをする。優は川で釣りをしている人をターゲットにして情報を集める。しかし、有力な手掛かりはおろか白い犬を見たという証言すらなかった。それでもなお2人で力を合わせて情報を掻き集めたのだが、結局何の成果もないまま日が暮れ始めた。




 「はあ、なかなか手掛かりが見つからないな。」




 「やばいっすよ。日が暮れちゃいますよ。」




 「こうも聞き込みがうまくいかないとなると、考えられるのは、、もっと遠くに逃げたか、誰かに拐われたか。」





 「それか森に迷い込んだかっすね。」




  
 「ああ、そうだな。」





 日が傾きかけた時の森は深い深淵を描いていてより一層不気味さに拍車がかかっていた。確実に何か良くないことが起きそうな予感だ。




 「...怖いから明日にしよう。」






 「...そうっすね。」





 僕達は思いを一つにして明日森での捜索を行うことを誓って、事務所に帰って寝た。

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