タヒチ探偵局〜罪人どもの異空間〜

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7.白樺屋



 白樺屋は家から歩いて5分くらいの所にあって、外観が真っ白だったのですぐにわかった。2人で恐る恐る中に入った。


 白樺屋は店内も真っ白で異様な雰囲気であった。しかし、中には東京で売ってるような缶詰やお菓子が売っていて懐かしい気持ちになった。お菓子コーナーの端から3列目に僕の好きだったチャルメラチョコもある。チーズおかきの隣にあって、子供の時を思わず思い出していた。



 「うわー、懐かしい!!ってまだこっちに来て1週間も経ってないんすけどね。てか店員とかいなくないっすか??」



 
 確かに中には僕達2人しかいなかった。店員を呼ぼうとする。とその時、




 「はい、いらっしゃい。あら、かわいい坊やがいるじゃない。」




 裏から出てきた店員さんは20代後半くらいだろうか。艶やかなロングの黒髪からいい匂いをさせている。



 「はあぁぁぁぁ!!ど、どうも、俺、は、若草優と申しまっす!末長くよろしくお願いしますっ!!!」




 「あらあら、元気がいいわねぇ。ところであなた達囚人さんでしょ?何か欲しくなっちゃったのかしらー?」




 店員さんはこちらに歩み寄って聞いてくる。なんとゆうかどことなくエロい雰囲気を漂わせていて、とにかくキャラが濃い。まるで風俗に来ているかのような気分になって来て、優なんかは店員さんに釘付けになっている。僕は早速本題に入った。





 「あのですね、実はこの街で人助けの為に探偵業をすることになりまして。で看守にそのことを相談したら白樺屋に行くといいって言われたんで..」




 「あら、そしたら貸しオフィスと事業許可書についてかしら。ちょっと待ってて。」




 店員さんが裏に戻って行った。優と2人で待っていると10分くらいで書類を持って戻って来た。





 「じゃあこの書類に代表者の囚人番号と名前と、あと黒の太枠のとこだけ記入して頂戴。あ、あと一番下にサインもね。」




 店員さんが書類とペンを渡してくれた。代表者って僕になるのかな。僕が書類に記入している最中、優はずっと店内を見回していた。そして缶詰を持って来て近寄って来た。




 「太一さん、見てくださいよ!牛丼の缶詰っよ!俺牛丼好きなんっすよ!店員さん、これ辛くないやつですよね?」




 「ええそうよ。東京からわざわざ仕入れたやつよ。」




 「おっし!太一さんこれ買っちゃいましょうよ。」




 「買うって、僕達まずお金持ってないだろ。」




 「ああ、そうでしたね。」



 「いいわよ、それ一個くらいなら。」



 「え、いいんですか?」



 「いいわよ別に。うちは囚人さんの快適な囚人ライフをサポートするのが仕事だから。この他にも何か困ったことがあったらいつでも来なさい。場所もわかりやすいでしょ?」




 店員さんは淫靡な雰囲気を漂わせながら言った。優はちょっと格好つけてお礼を伝えた。僕は丁度書類を書き終えたので店員さんに渡した。




 「はい、ありがとう。....うん、書類はバッチリね。じゃあ手続きはこちらでしておくから。で、これが事務所の鍵。」


 

 そう言って鍵を渡してくれた。普通の鍵だ。




 「場所はここを出てそのまままっすぐ行ったらスーパーがあるからその隣の灰色の建物の三階ね。前の囚人さんが使ってたオフィスだから基本的なものは揃ってると思うから。探偵業頑張ってね、応援してるわ。」



 店員さんはそれだけ言って地図も渡してくれた。僕は鍵をポケットに入れて優と共に地図を見ながら事務所に向かった。



 
 ...と言っても地図を見なくていいくらいシンプルな場所にそれはあった。見た目はちょっと古いがなかなか想像よりもしっかりしている。




 「へぇー、なかなかいいとこじゃないっすか。入りましょうよ。」




 優が缶詰を大事そうに抱えて言った。



 「ああ、そうだな。」



 僕がポケットに手を入れたその時、気づいた。
 ...鍵がない。あれ、白樺屋を出る時は確かにポケットに入れたはず。まずい、どこかで落としただろうか。僕が服のあらゆるポケットを探していると優が声を掛けてきた。




 「あれ、太一さんどうしたんっすか?」



 「ない!鍵がないんだよ!あれ、どこかで落としたかな?」



 「え、鍵っすか?ちょっと待ってください... ええっと、鍵なら白樺屋出てちょっと進んだとこにありますよ。」




 「えっ!?」



 優の言う通りの場所に戻ってみると確かに鍵があった。



 「あった!優、鍵見つけてくれて助かったけど落とした時に言ってほしかったよ。」




 「いや、落とした時は気づかなかったっすけど記憶辿ったらわかったんすよ。ここで落としてたなあって。」




 「お前、何言ってんだよ。」



 
 いや待て、なんか大学で習ったぞ。サヴァン症候群の人が持ってたりするやつ、、そうだ「カメラアイ」だ。




 「...優、白樺屋のお菓子コーナーの端から3列目に何があったか覚えてるか?」



 「ええと、確かチャルメラチョコでした。その隣はチーズおかきで..」


 「優!」
 


 僕は優の手を握っていた。優の持つ異能力は瞬間記憶能力だった。

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