タヒチ探偵局〜罪人どもの異空間〜
3.異能力
「ここにくる囚人さん達は必ず1人一つ特別な能力を授かってこの街にやってくるんじゃ。」
僕はいよいよご飯なんか食べてる場合じゃなくなって普通におじいさんの話を聞いていた。女の子はただ黙って食事を進めていた。そろそろ食べ終わりそうな勢いだ。
「異能力って、それ僕にもあるんですかね?全然、その、なんていうか授かった実感...みたいなのないんですが...」
「いいや、囚人さん達は例外なく持っているはずじゃ。まあ、その内容は人それぞれでワシにもわからんがの。とにかく、その異能力を使って人の役に立ち、カルマが完全に精算されたと認められれば晴れて出所じゃ。」
「はあ、そうなんですね。あの、失礼ですが、あなた達は何者なんですか?」
「ワシ達は看守の一族じゃ。普通、この世界の看守は女の子がするのが決まりでの。7番くんの囚人はこの子。」
おじいさんは隣の女の子を指差した。
彼女はもう食事を終えていた。
「...何よ。文句あるわけ!?」
女の子が僕を睨んでくる。
「いいえ!別に!あの、その言い方だと囚人1人につき看守が1人決まってるんですか?」
「左様。この子は桔梗という。仲良くしてやってくれ。」
「ご馳走さま。」
桔梗はそそくさと立ち上がり、自分が平らげた皿をキッチンに運ぶ。
「よ、よろしく...。桔梗ちゃん...。」
一応挨拶すると、桔梗は振り返り、また僕を睨みつけて階段を上がっていってしまった。
「ほっほっほっ。まあ、桔梗もまだ看守になったばかりじゃからの。ワシが一応あの子の看守としての教育係もしとる。看守と言っても主には囚人さん達の世話と、悪いことをしないように注意するくらいで、こう言っちゃあなんだが家族だと思ってもらっていい。ここは7番くんの家だと思ってくつろいでくれ。」
「あ、ありがとうございます。お世話になります!」
「気を遣わんでええわい。それじゃ、ワシもこの辺で。あ、さっき7番くんが寝てた部屋使っていいからの。何か困ったことがあれば聞いとくれ。」
おじいさんはいつの間に食べていたのか、気づいたら食事を済ませていて、自分の食器を片付け始めた。にわかには信じがたい話だったが、罪人の僕は何も言えなかった。もしかして壮大なドッキリではなかろうか、いや、こんなドッキリを僕に仕掛けて誰にどんなメリットがあるんだ!?ここは大人しくさっきの話を信じよう。
そうして僕もスープをすすった。やっぱり辛かったが、改めて食べると美味しい。その日はスープで腹を満たし、部屋の中で寝た。
□□□□□□□□□□□
次の日、自然と目が覚めた。日差しがとても柔らかくて、穏やかな朝だ。僕は昨日のことを振り返っていた。
僕に与えられた異能力はなんだー。
この街で人助けなんて、どうやってやっていけばいいんだー。
しかし、いくら考えても答えは出ず、とりあえず自分の異能力を探しながら人助けしていくことにした。あ、そういえばおじいさんの名前訊いてない!おじいさん、本当に優しかったな。あの桔梗とか言う女の子は怖かったけど、でも可愛かったし、少しずつ仲良くなっていこう。悩んでも仕方がない、とりあえず今日は街に出てこの街のことをよく知ろう。
僕は布団を畳み、部屋を出た。すると偶然桔梗と出くわした。
「....何?」
彼女は僕と目が合って、不機嫌そうに呟いた。寝起きの彼女はパジャマも可愛かった。まあ彼女からしてみれば僕なんておっさんだし、年頃の女の子と一つ屋根の下で暮らすなんて、本人からしてみれば嫌だよな。そうだ、余裕が出たらこの家を出よう。そしたら彼女にとって人助けになるのではないか。いや、でもこのパジャマ姿を見れなくなるのは嫌だな。
...なんて考えながら僕は桔梗の目を知らないうちにずっと見つめていた。彼女は少し俯いて眉をしかめた。
「....え、本当に何?」
「い、いや...」
やっぱりまだ恐縮してしまう。
桔梗は僕の顔を見て、それから階段を降りていった。僕は一階で歯を磨いている彼女を横目に、散歩がてらの探検に出掛けた。
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