あの滑走路の向こう側へ

きさらぎ ねこ

第3章 七、突然の見舞い



大学病院に到着すると、
紘太が車椅子を押してやってきた。

痛みを堪えながら美香は言った、
「唯の彼氏さん、お世話になります、
 上原美香と申します」
「上原さん、初めまして。これは…痛そうですね、診察室へ急ぎましょう」

診断は骨折で、全治3ヶ月、
ひとまず数日入院との事だった。

翌朝、家族や会社、唯やSNSにも報告した。
美香の母が慌てて着替えなど持ってやってきた。

夕方、唯から聞きつけた同期の真実子が、
雑誌や差し入れを持ってやって来た。
「骨折なのに、牛乳飲むのツライとか言うから、スティックのカフェオレも持ってきてみたよ」

美香を心配するかたわら、
史緒里は、唯と付き合う紘太も気になるようで、病室と廊下をウロウロしていた。

翌日は日曜日で、
ちらほら見舞客も病棟に見えた。

昼過ぎ、様子を見に来た紘太と談笑していると、ドアがノックされた。

それは真樹だった。

かなり驚く美香を残し、
紘太は、お大事に、と出て行った。

「え…?なんで…?」

「菜々ちゃんがSNSで知ったみたいで、
 貴洋が教えてくれたんだ」

真樹はしばらくすると、
負担になるといけない、と早々に帰った。

混乱のおさまらない美香は、
何を話していたのか、思い出せないほどだった。

心がざわついて落ち着かないまま、
3日間の入院は過ぎた。



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