あの滑走路の向こう側へ

きさらぎ ねこ

第2章 三、もうすぐ夏休み



溶けるような日差しが照りつける外から
唯はエアコンの効いたオフィスに戻った。

課長の草津が言っていた通り、
唯は、だいぶ仕事に慣れてきた。

「夏期休暇、ホントにこんなに長いんですか」
唯は端末に向かい、杉浦と話していた。
「土日入れてるとは言え6日も休みなんて…前なんて、月跨ぎで3日が最長でしたよ」
「えー、ホンマに?」

「杉浦さんは、ご家族と帰省ですか?」
「うん、両方の実家、どっちも気ぃ使うで」
「そんな気なら、使いたいですよ。
うちは墓参りツアーと、親戚の集まりで、
結婚はーって、やいのやいの言われるんですよ」
唯はため息をついて見せた。

仕事も落ち着いてきた、この夏休みに、
唯は、以前の職場近くから、
会社や実家のある市に引っ越す事にした。

きっと、忙しい時間の合間を縫って、
紘太と会う時間も増えるだろう、
唯はそう願っていた。

唯の新居からは、会社も紘太の家も、
自転車で15分だった。
新しい生活が、とても楽しみだった。



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