あの滑走路の向こう側へ
第1章✈︎ 四、はじめての待ち合わせ
桜の開花も聞こえようかという頃、
唯は交番の前に立っていた。
紘太が笑顔で駆け寄ってくると言った。
「交番の前で待ち合わせするヤツなんていないし、わかりやすいでしょー!ナンパもされないし!」
面白い事を考える人だと笑いながら唯は言った。
「確かに、誰かと待ち合わせてるのに、
声かけてくる人いるよね」
紘太がすぅっと細い路地に入ると、
そこには古民家風の店があった。
落ち着いた佇まいの和食店で、
ゆったりと時間が流れているようだった。
「国家試験、合格、おめでとう」
「ありがとう」
「高峯先生だね!」
「それでも私は人をなおすんだっ!
自分が生きるために!!」
「…、ん?」
「知らない?ブラックジャックの名言」
「今度、読んでみるね」
それから唯は、
紘太の旅の話を一通り聞くと、
「帰りのフライト、教えてくれたらよかったのに」
と、会いたかった気持ちが溢れて、つい口に出た。
しかし紘太の次の話題に移ってしまった。
「そういえば、飛行機の中でトマトジュース飲みたい時、国際線だったら、トメィトって言うか、トマトって言うか、迷うよね」
あぁ、流されたな、と思いながらも、
その楽しそうな紘太を見てしまうと、
淋しい気持ちもかき消され、
思わず笑ってしまう唯だった。
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