現実世界が嫌になったので、異世界で魔王の夢を叶えて来ます!

白星

第21話 休日(3)

 振り向いた俺の目の前にはボロ布で作られたフードを被った一人の少女が立っていた。
 一瞬驚きそうにもなったが、その少女を見るとそんな気にはならなかった。
 なぜなら、俺の前で立っている少女の目は涙で潤んでいて、今にもその涙が頬を伝おうとしていたからだ。
 驚くより先に俺の脳が思考停止した。

 「ち、ちょっとすいません!」

 何を思ったのか俺は少女の手を引っ張り店の外へと出た。
 店の近くに人だかりが少なそうな細い道があったのでそこに駆け込んだ。
 そしてもう一度少女と向かい合った。
 少女の顔は俺が急に手を引いたからか、すごく驚いたような顔をしていた。
 この状況を誰かに見られたら真っ先に俺が怪しまれるだろうな…だけど今はそんなこと考えてる時ではない!

 「俺になんかようか?」
 
 少女に対しては少し強い口調かとも思ったが、とりあえず一番聞きたかったことを聞けた。

 「あ、あの…」

 戸惑いながらも何かを言おうとしたがまた黙ってしまった。
 
 「え、えっと~…じゃあ名前を教えてくれないかな?」

 今度は口調に気を付けて優しめに聞いてみた。

 「………ビィナ」
 「俺は暮人だ。よろしくなビィナ。」
 「……うん。」

 ビィナが初めて俺の前で笑ってくれた。
 よかった。もう俺を怖がってはいないようだな…

 「ところでビィナ、なんで俺についてきたんだ?家族はどうしたんだ?」
 「………」

 ビィナは口には出さず、ただただ首を振りながら泣きそうになっていた。
 どうしたものか?このままじゃビィナが泣き出してしまうだけだろう。
 考えて考えてめちゃくちゃ考えた結果…なぜか一回家に連れていくことになった。
 そして今、家へと帰る途中、ビィナと手をつなぎながら歩いている俺は後悔はしてないもののこの状況をサラとリーゼに見せたらどんな目で見られるのかが怖かった。
 だってね…泣きそうな少女をとりあえず家に連れて帰るって、完全にロリコンみたいじゃん。
 サラとリーゼに蔑まれるのだろうか?考えるだけで胃が痛くなってきた。
 そうこうしてるうちに家の前へとついてしまった。
 俺は恐る恐る家の扉を開けた…。

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