現実世界が嫌になったので、異世界で魔王の夢を叶えて来ます!

白星

第5話 本題

 「さて、ここからが本題なんじゃが…暮人殿に行ってもらおうとしてる異世界ではな、あらゆるところで起きる事件や災害は全部魔王の仕業だと決めつけられておるのじゃ。」
 「それはなんでなんですか?」
 「今から八十年前のある日、魔王に仕えておった一人の魔族が一つの村を滅ぼした事件があったんじゃ。」

 神が記憶を遡るかのように話している横で、魔王はなぜか悲しそうにしていた。

 「これまで魔王と人間の間には良好な関係が築かれておったのじゃが、この事件がきっかけで最悪な関係になってしまったんじゃよ。」
 
 そこからの話は悲惨なものだった。
 何とか前の関係を取り戻そうとした魔王はあらゆる町や村に行っては信頼を取り戻そうとしたが、話を聞いてもらうどころか魔法を使える人は詠唱を唱え、それ以外の人は武器を構えて追い出そうと必死だったらしい。

 「もちろん力を使えば魔法や武器を無力化できるのじゃが、それをしてしまってはさらに関係が悪くなり、今度は取り返しのつかない状態になってしまうことを恐れた魔王は何もできず帰ることしかできなかったんじゃ。」
 
 俺とは違うな…力がなくて何もできなかった俺とは違う、もし自分に力があったら家族を殺していただろう。
 考えれば考えるほど魔王の優しさが伝わってきた。

 「さて、ここまで話してきておおよその予想はついてると思うが…その異世界の魔王はここに居るヴォルなんじゃよ。」

 まぁ…神が異世界で起きたことを話してる時の落ち込みようでなんとなくわかっていた。

 「魔王様一つ聞いてもいいですか?」
 「ん?ああ、なんだ?」
 「その魔族はなぜそんなことをしたんですか?」
 「我にもわからん。理由を聞こうにもその魔族は事件後から行方をくらましておるのだ。」
 「……なるほど」

 しばらく考え込んでいる俺を魔王が不安そうな様子で見ていた。

 「ど…どうしたんですか?」
 「暮人よ異世界に来てくれるか?」

 なんだそのことが心配だったのか…俺の答えは最初から決まっていた。

 「そのことなら一つだけ条件をのんでもらえたらいいですよ。」
 「うむ、ではその条件とやらを聞こう。」
 「魔王様の夢を叶えてからもその異世界で暮らせればいいです。」
 「そんなことでよいのか?」

 魔王は少し驚いた反応をしていたが俺にとってはそれが一番大事なことだった。
 
 「はい。それがいいんです。」
 「…よかろう。その条件をのもう。」

 こうして俺の異世界行きが決まった。

 「おお!そうじゃ忘れておった。暮人殿にどうしても会いたいと頼まれておったんじゃった。」
 「そういえば我も暮人が異世界に来てくれるか心配で忘れていたわ。」

 俺に会いたい?いったい誰なんだ?

 「おーい、もう出てきてよいぞー」

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