異世界救う元漁師

琴瀬 ういは

白い空間での暮らし

花畑の世界からネコミミさんであるティオナさんとメイドさんであるネロさんが暮らす空間へやって来たのだが。

なんというかめっちゃ真っ白だった。
限りなく白っ!圧倒的に白いっ!


「レイ、少し目を瞑ってくれるかしら?あなたに私たちからちょっとしたプレゼントを渡すわ。」

「え?うん。わかった」


そう言って俺は目を瞑った。
瞑ったはいいが余りにも時間が経ちすぎる。ちょっと不安になってきた。
え?ちょっとっ!ネコミミさぁん。
そこにいるんだよね?いるんだよね?


「もう目を開けていいわよ。」

「うっそだろ。」


それ以外言葉が出なかった。
何もなかった空間が急に変わっていたのだ。目の前にあるのはなんとテレビだった。

テレビの前にはテーブルがあって、その前にはソファーがある。

ベッドもあるし、本棚もある。
そう、これは俺が死ぬ前に借りていたアパートの部屋だ。


「ふふっ、どう?気に入った?そうだっ、他の部屋も見に行く?私の部屋とか、ネロの部屋とか、ジルとアーテルの部屋もあるわよ。」

「もしかして一軒家なの?」

「ええ、そうよ。素敵でしょ?庭もあるのよ。それに貴方が鍛錬するための施設だって作って貰ったわ。さすがジルね。」

「ジルさんが?」

「ええ、みんなが考えてジルが作ったわ。」


やっぱりすごいな創造って。
でもすぐにババッと作れるものじゃないんだな。
と感心していたらある事に気づいた。
なんと、窓の向こうに景色が広がっているのだ。

なんで?さっきまで白かったのに。
疑問が頭を埋め尽くす。


「ふふっ、あははっ!考えてる時のレイは可愛いわね。景色については後で話すわ。こっちに来て、さぁ家の中を見て回りましょう。」


そして俺はネコミミさんと一緒に家の中を見て回った。
キッチンはもちろんあるし、お風呂だってある。

リビングには大きいテレビとソファー、みんながご飯を食べる食卓テーブルもあった。

なんと、囲炉裏まである。
なんというかものすごい贅沢感があるなこれ。

庭にも出てみようと言われ出た。
まず目に飛び込んで来たのが大きな木だ。
樹齢何年かも分からないぐらい大きな木で、大きな枝から紐がぶら下がっている。
そう、ブランコだ。

そこで1人の少女が遊んでいる。
俺とネコミミさんが見ていることに気がつくと、ものすごいスピードでこっちに来た。


「あー!レイおにぃ!あーそーぼー!!」

「あぁーえっーと」
 
「いいじゃない、少し遊んで行きましょう。」

「わーいっ!あのね!あのね!アーテルね!おままごとがしたいっ!」


まさかのこのタイミングでおままごとをチョイスするなんて、アーテル恐ろしい子。

というかティオナさんなんでそんなに目を輝かせてるの?怖いんだけど。


「レイおにぃはパパさんっ!ティオナおねぇはママさんっ!アーテルはパパとママのこどもっ!」

「ええ、ええ、わかったっ!ママ、全力でママをするわね!」

「えっと、パパも頑張るっ!」


こうなったらとことんやってやる。
と言ってやってみたもののめっちゃ疲れた。

2人は完全に演技に入っちゃうし、アーテルはすぐ寝ちゃうし、ティオナさんに至っては「このままベッド…行く?」なんて言いやがりますし、そして寝るし、ほんと疲れた。



☆☆☆☆☆☆



ということで二人は仲良く木の下で寝ている。俺はというと一人で辺りを散歩していた。

そこで一人の人物に出会う。
ジルデットと名乗った爺さんだ。
月と創造の神であり、俺のお爺さんなんだとか、ネロが言うには、俺とお爺さんは目元が似ているそう。


「おやおや、お主を探しておったのじゃ。見つかって良かったわい。この空間を少しイジったら道に迷うての、ふぉふぉ。」

「何か様でしたか?」

「む?そんなに畏まらんでもよい。わしらは家族じゃろ?」


そういえばそうだった。
よし、これからはお爺さん相手には敬語は無しで行こう。
その方が気楽だし。


「さて、レイ。ちょっと場所を変えるかのぉ。」

「お?なんだここ?」


お爺さんが手に持っていた杖で地面をコツンと二回叩くと別の場所にいた。

なんだろう、丘のような場所だ。
所々に墓のような物がある。
もしかしてここが、鍛錬するための施設なのだろうか。


「明日からこの地で鍛錬してもらうからのぉ。準備とかしといてくれると助かるのじゃ。」

「おお!ここでやるんだ。というかこの墓は何?お爺さん。」

「・・・それはの……わしの友人じゃ。」


え?かなりの数があるけどもしかして全部友人なのか?もしかして冗談か?いや、冗談でも笑えないぞ、これは。


「かつて神界に一人の赤子が現れた。その赤子を授かった神は大事に育てた。その子は強く、たくましかった。それを周りの神が利用しようとしたのじゃ。それで奪い合いがどんどん酷くなっての、争奪戦まで発展してしまった。その時に命を落としたわしの友人たちの墓じゃ。」


お爺さんは辛そうに語った。
拳を握りながら怒りを表している。
体から溢れる何かによってさらにそれは膨らんでいった。


「おっと、スマンのぉ。つい感情的になってしもうた。あともう1つ、その赤子はお主の父親じゃよ。今はもうおらぬがな。戦争で死んでしもうた。」

「そうだったのか。父さんも戦ってたんだね。今はもう争い事はないの?。」

「あぁ、もうないのぉ。皆あの事を胸に秘めながら暮らしておる。もうあんな事はしたくないからのぉ。」


俺の父親は俺が小さい頃に亡くなった。
母親も俺を産んですぐに亡くなった。
親戚に拾われたがいい扱いは受けなかった。
父親の死がまさか戦争だったのは初めて知った。


「さて、レイよ、そろそろ家へ帰ろう。メイドがご飯を作って待っておるじゃろうしのぉ。」

「うん、わかった。行こう。俺もお腹ペコペコだ。」


そしてお爺さんと俺は家へ帰り、皆と一緒に食事を取った。

流石に疲れて、部屋に戻ったあとはすぐに寝てしまった。

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