異世界救う元漁師

琴瀬 ういは

白い世界と白い猫

<???side>

「ティオナ様、起きてください。」
「んーまだ寝たい…あの子は来たの?」
「いえ、まだ来ておりません。」
「ならまだ寝てたい…」

そう言って少女はまた瞼を閉じる。

「ダメですティオナ様、あの方をお迎えに行かねばなりませんから。」
「迎えに行くの?私も?」
「勿論です。大切な人でしょう?」

メイド服を来ている女はゆっくりと少女の体を起こした。
右に紅い目を、左に金色の目を持つ少女。
肌は白く、また髪も白い。
そして一番特徴的なのは頭の上にある二つの突起物、獣耳だ。

「起こしてくれてありがとうネロ。」
「いえ、これが私の仕事ですので。」

メイド服を来ている女はネロという。オレンジ色の髪をサイドでまとめており、しっかりしている。
目もキリッとしており、よりしっかり者という感じだ。

「あの子が来たらこの空間、少し変えようかな?何も無い真っ白な世界だし」
「ええ、その方が良いかと。でもあの方は一体どんな方なのですか?私は見たことがないので」
「とても弱い子」

少女が呟くと同時に目の前には椅子が現れた。それに座り言葉を続ける。

「弱いけど、生きる力は強いよ。誰にも負けないくらいにね。どんな状況でも耐えれると思う。」
「でも今は…その…」
「うん、無理だね、だって自分を変えないから。ずっと防戦一方で攻撃しない。そこがあの子の悪い所。でも、そんなこと所も好きかな。」

今度はテーブルが目の前に現れ、ネロは紅茶とケーキを出した。

「ではこの空間に来た時にはティオナ様があの方を変えるのですか?」
「私ではなくあの子のお爺さんよ。ジルの孫だもの、あの子は。初対面だと言うけど、すぐに打ち解けるでしょう。」
「確かにジルデット様相手なら大丈夫ですね。あの方はいい方ですから。」

一人の少女と一人のメイドな女、ティオナとネロは紅茶を飲みながら今後の事を話す。

「いつ頃あの花畑に行くの?」
「紅茶とケーキを楽しんだら行きましょう。時間的に丁度いいはずです。」
「わかったわ。早く会いたい、あの子に。零、私が心に決めた子だもの。」


<ジルデットside>

この花畑にも夜は来る。
満点の星空が広がり、見る人を魅了する程の綺麗さだ。

「もうすぐか、うむ、ティオナ嬢はまだ寝ておるのか?まぁ、あのメイドが起こし、連れてくるじゃろう。」
「すっー、すっー」

アーテルはぐっすり眠っている。昼間に遊びすぎたのだ。まぁ子供はこれぐらいが良いかと、目を細めて頭を撫でる。

「ここに彼奴が来たら引越しじゃな。この子は嫌がるだろうが、仕方ない。元々、零はティオナ嬢が心に決めた子じゃ。あっち側の空間にいた方がよいじゃろ。零と離れる訳じゃないからのぉ。大丈夫なはずじゃ。」

星を眺めながら、独り言を言っていると目の前の空間が歪んだ。

「む、来たか」

歪んだ先から出てきたのは一人の少女と一人のメイドだ。

「お久しぶりです、ジルデット様。」
「あぁ、久しぶりじゃのぉ白猫の従者殿。」
「その名で呼ばれるのは少しくすぐったいです。慣れてないので。」
「ふぉふぉ、そうかそうか、悪かったの。そちらも久しぶりじゃの、ティオナ嬢。」
「ええ、久しぶりね。懐かしいわね、この世界は。あの話し合いは私の空間だったものね」

ティオナは椅子を出し、座りながら話した。その隣で立つメイド、ネロはキリッとしている。

「もう少しじゃのぉ。彼奴が、荒波 零が来るのは。」
「その子はアーテルは寝ているのね。のんびり屋さんで可愛いわ。」

その時、ネロはハッと顔を変えた。

「も、申し訳ございません。ティオナ様、私の妹が…その…」
「いいわ、まだ子供だもの。仕方ないわよ。確かあなたって何人兄弟だったか忘れてしまったわ。」
「じゅ、十人兄弟です。この子は一番下の子でジルデット様に面倒を見てもらっています。」

顔を赤くしながらネロはモジモジとしている。いつものキリッとしている感じが崩れている。

「この子はまだ生まれてから100年ちょっとだからのぉ、幼いからそこは許してやってくれ。」
「元々私は怒ってなんかいないわ。ただ寝顔が可愛いと思っただけよ。私と零が子供を作った時こんな感じなのかしら。」

(うむ、そんな事を考えるようになったか。話し合いをした時はもっと冷たかった様な気もしたが。)

そこでネロが震わせながら声を上げた。

「この感じ…」

(ついに来たのぉ!やっと会えるのか、儂の孫に)

ジルデット達はすぐにアーテルを起こし、一人の青年を迎えに行くのだった

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