異世界救う元漁師

琴瀬 ういは

落ちこぼれな人生2

真っ暗な空間にいた。
何も見えないし、何も出来ない。
何処なのか分からないが一つだけ分かることがある。
それは……恐怖だ。

「この場所が怖い?」

声が聞こえた。とても綺麗で、透明だけどすぐに消えてしまいそうなか細い声。

「大丈夫だよ。私がそばに、ずっと一緒にいるよ。だから安心しておやすみ」

意識が遠のいて行く。また俺は一人になるのか、嫌だ、そんなの嫌だ!

「いつまで寝てんだこの野郎っ!」
「冷たっ」

目が覚めた。
顔が濡れている、服もびしょびしょだ。

「全くお前は、こんな所で寝る馬鹿がいるか?」

目の前には船長がいた。
手にはバケツを持っているし、どうやら水を掛けられたらしい。

「何度呼びかけても起きなかったから水かけた、悪ぃな。早くシャワー浴びてこい、風邪ひくぞ」

「すみません…ありがとうございます」

そう言って俺は体を起こし、シャワー室へ歩こうとした。
そこで一つ違和感を覚えた。
(ん?なんでだ?体が痛くない。)
体のあちこちを殴られて気絶する事は前にも何度もあった。
目が覚めると必ず痛みが全身を襲う。
それが嫌で何度も目が覚めなければ良いのにと思っていたのに。

「おい、どうした?シャワーに行かねぇのか?」

「いえ、行きます…すいません」

(今はとりあえずシャワーを浴びよう)
俺はすぐにシャワー室に向かった。
シャワー室前に脱衣所がある。そこで服を脱ぎ、シャワー室に入るのだが。

(相変わらず汚い体だな。傷だらけで酷い。くそっ、俺は何もしてないのに、なんでこんなに…)

考えても仕方ない。とりあえず今は何もかもをシャワーで洗い流したかった。

(とても綺麗な体だね。私、その体好きだよ。うん、かっこいい。)

また、またあの声だ。
綺麗で、か細い声。透き通っていて、すぐにいなくなる様な声。
動物に例えるならイリオモテヤマネコ様なそんな感じの声。

(俺、完全におかしくなってるな。ははっ!殴られ過ぎて幻聴聞こえるとか、もう終わったなこれ)

そうしてシャワーを浴び終わり、寝台に入って次の仕事の合図が来るまで俺は寝た。

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