そこからはじまる恋!

成瀬瑛理

恋のスタートライン1

「俺はお前に辞めて欲しくないって、そう思ったんだ――。だから戸田課長に言われたから連れ戻しに来たんじゃないぞ……!」

「それに俺は………!」


「葛城さん……!」


「ッ…!?」


 その瞬間、阿川は彼の名前を呼ぶとバッと抱きついてきた。急に抱き締められると、葛城は驚いた表情を見せたのだった。



「ありがとうございます…――!」



 阿川は葛城のその気持ちが嬉しかった。本当だったら嫌われても当然なのに、不器用だけど自分を受け止めてくれる彼の心の広さに、言葉では言えないくらいの気持ちに心が満たされたのだった。

 彼を抱き締めるとその腕は震えていた。自分より、大きな体格の男が目の前で小刻みに震えている姿をみると、葛城はそっと彼の背中を叩いて受け入れた。まるで幼い子供をあやすようなそんな優しさが手のひらから伝わったのだった。阿川は葛城の肩に顔をうずめると、そのまま自分の顔を手で覆って泣いた。そして再び「ありがとう」と震える声でそう言ったのだった――。

 葛城は瞳を閉じると、阿川の目の前で彼が書いた退職届けを破り捨てた。その表情はどこか、穏やかだった。



「――もうこれは必要ないな?」



「葛城さん……」



「必要ないだろ?」



「……はいっ!」



 彼にそう言われると、泣きそうな気持ちをグッと堪えて明るく返事をしたのだった。そして、空には破り捨てられた紙が宙を舞った。まるで綺麗な花吹雪のように風に吹かれたのだった。風に吹かれた紙が宙を舞う中、阿川はそこで自分の決意を話した。



「葛城さん、改めて貴方に言いたいことがあります。だから聞いてくれますか?」



「ああ、聞いてやる…――!」



 阿川は真剣な瞳で彼に想いを伝えた。



「俺、やっぱり貴方が好きです……! だから言わせて下さい……! 好きにさせます、絶対に…―――! だから覚悟して下さいね!?」


 彼の口から出た宣戦布告に対して、葛城は驚いた表情で佇んだ。そして、フと笑みを浮かべるとその場で直ぐに言い返した。


「――そうか、じゃあ言わせて見ろ。だけど俺はそんな簡単には落ちないぞ? 何せお前は俺より年下だからな。年上を口説くには10年早い。それに俺達はまだ恋愛にもなってないんだぞ?」


 葛城のその言葉に阿川は、真っ直ぐ見つめて言い返した。


「じゃあ、今から二人でよ~いドンしましょうか? 恋愛にスタートラインって肝心じゃありませんか?」


「スタートライン?」


「そうです。じゃあ、よ~いドンしましょう!」


「子供だな、でも何かを始めるにはスタートラインは肝心だな……」


 葛城は阿川にそう言われるとフと呟い。その瞬間、自分の頬に彼の唇が触れたのだった。


「なっ、何する……!?」


 突然ほっぺにキスされると顔が一気に赤くなった。阿川は彼の頬にキスすると、悪戯に笑って見せた。






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