そこからはじまる恋!

成瀬瑛理

揺れる想い1

 阿川は葛城に最後にキスをすると、その場で潔く身を退いた。

「葛城さんの気持ちよくわかりました……。俺はきっとこの先ずっと、貴方のことが好きだと思います。忘れられない人になるかも知れないですけど、どうか心の中で貴方を想うことを許して下さい……。じゃあ、葛城さん。これで貴方とは本当にお別れです。今まで色々とありがとうございました。そして、どうか元気で…――」

 阿川はそう言って葛城の顔に手を差しのべると、彼の右の頬を撫でたのだった。その表情は切なく、そして失恋したような表情だった。

 葛城は阿川にそう言って別れを告げられると、呆然とした表情で立ちすくんだ。阿川は葛城に背中を向けると、地面に置いていた段ボールの箱を両手に持って、非常階段の入口へと向かったのだった。

 彼の背中を見つめると、急に心の奥がざわついたのだった。最後にキスされた時の胸のときめきが甦ると唇は震えた。そして、気持ちがざわつくとハッキリとした応えも出せないまま、後ろから彼の腕を掴んで引き留めたのだった。



「待て、阿川行くなっ……!!」



 葛城は自分の目の前から立ち去る彼を咄嗟に引き留めると、その拍子に阿川は持っていた段ボールの箱を両手から地面に落としたのだった。


「葛城さん、どうして俺を引き留めるんですか? 貴方は俺の気持ちには応えられないと言いました。なのにどうして俺を引き留めたりするんですか?」

 阿川は腕を掴まれて引き留められると、振り返ることもなく背中を向けたまま彼に尋ねた。葛城は彼の腕を掴んだまま、うつ向いた顔で静かに応えた。


「…… 自分でもわからない。でも、この腕を離したらお前とはもう会えないと思っただけだ!」


「葛城さん……」


「それにあんな風なキスされたら、お前のことを 忘れることも出来なくなるだろ……!」


 葛城は彼にそう話すと、体を小刻みに震わせたのだった。


「阿川、一度しか言わないからよく聞け。お前が辞めるのは勝手だが、だけどその理由が俺だったら許さない。お前が俺に辞めるなと言ったように俺はお前には辞めて欲しくない…――!」


 そう言って顔を上げると葛城は彼の方を真っ直ぐ見つめて、自分の気持ちを口にしたのだった。


「だから辞めるな阿川、ここで俺と一緒に居てくれ…――!」


 葛城は気持ちがまだ整理できない状態の中で、勇気を振り絞ってそう話すと、掴んだ腕を強く握ったのだった。阿川はその言葉にゆっくりと後ろを振り返ると、真っ直ぐな瞳で彼を見つめた。


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