そこからはじまる恋!

成瀬瑛理

嘘と切なさの間2

「っぅ……もう勘弁してくれ……! お前の気持ちには応えられない……! 俺にこれ以上、どうしろって言うんだっ!? 俺は男なんか愛せない……! だから直ぐになんて変えられない……! お前みたいに同性を好きになったことなんか一度もないからな……! なのに何でお前は俺を苦しめる!? そんなに俺を苦しめるのが楽しいか!? 俺は正直お前が怖い……! お前の気持ちは俺の心を苦しめるだけだと何故わからないんだ!」

 葛城はかき乱された心を露にすると、そう言って怒鳴りつけたのだった、自分の中で消化出来ない思いを全部ぶつけると、そのまま地面に両手をついて泣き崩れた。もうどうしたらいいのかわからなくなると、阿川の目の前で体を震わせて泣いた。そして、地面に両手をついて泣き出した。同性を好きになったことがない彼にとって、阿川の気持ちは彼の心を苦しめた。
それと同時に彼に対して、その気持ちを受け入れてしまう自分が怖かった。消化出来ない思いを全部ぶつけると、そのまま肩を震わせて泣いたのだった。

 阿川は彼の苦しみと自分へのおもいに悩んでいる姿が見ていて胸が痛かった。自分が彼を追い詰めているとおもうと、その場でしゃがんで話しかけた。


「……もう十分わかりました。貴方が俺をどう思っているのか、本当はまだ気持ちが混乱しちゃってるんですよね? 俺は確かに同性しか愛せないです――。だけど貴方は違う。だから俺に好きだっていわれて自分の中で気持ちがぐちゃぐちゃになっちゃったんですよね?」


「……葛城さんごめんなさい、貴方を沢山苦しめて。俺の気持ちは貴方にとっては迷惑なだけかも知れませんね……。だけど俺は貴方が好きです。この気持ちだけは本当です…――」


 阿川は泣いている彼の肩に両手を置くと、まっ直ぐな瞳でジッと見つめた。葛城はその言葉に顔を上げると、彼の瞳を静かに見つめ返したのだった。


「葛城さんこれだけは聞かせて下さい。貴方は俺のことが嫌いですか?」


「あっ、阿川…――」



「俺が嫌いですか?」


「ッ……」


 彼からそのことを質問されると、葛城は自分の唇を噛んで顔をうつ向かせた。

「………俺は最初はお前が嫌いだった。でも今は嫌いじゃない。嫌いじゃないけど、突然過ぎて好きとかそう言った気持ちがよくわからないんだ。同性から告白されたのは初めてだったから、お前の気持ちを受け入れるのが俺は怖いんだ。それにその気持ちを受け入れたら自分じゃなくなってしまうのが余計に怖い…――」


「葛城さん……」


 阿川は葛城の口から本当の気持ちを聞かされると、それでも好きだと想いを伝えたのだった。

「――葛城さん、俺は貴方が好きです。好きでしょうがないくらい大好きです」


「阿川…――!」


 再び告白されると、少しずつ自分の中で気持ちが揺れたのを感じた。


「……何を言ってるんだ。俺はお前の気持ちには応えられ――――」


 そう言って言い返そうとすると、彼の瞳の奥には自分しか映っていなかった。熱のこもった眼差しで見つめられると心臓が高鳴った。それと同時にその瞳の奥に吸い込まれそうな気がしたのだった。


「葛城さん、もしかしたらキスしたら何か解るかも知れませんよ?」



「えっ……?」



「最後に貴方を抱き締めてキスしてもいいですか?」



「あっ、阿川………!」


「貴方に触れるのは多分、これが最後になると思いますし。だから最後にもう一度触れさせて下さい…――」


 葛城は阿川のその言葉に身体がびくつくと、そのまま下を向いて顔を赤くさせたのだった。


「好きにしろ…――!」


「ありがとうございます…………」


 阿川は葛城の身体をぎゅっと抱き締めると、壊れ物に触れるように、そっと唇を重ねてキスをしたのだった。その切ない口づけは、初めて感じるようなときめきだった。あの夜、強引にキスされた時よりも優しく。そして、胸がぎゅっと締め付けられた。葛城は彼のキスに初めて感じた気がした。


「ンッ………」


「葛城さん…………」


「阿川…――」



 名前を呼ばれると葛城は身体中が熱くなった。そして、気がついたら自分の腕を彼の背中にまわして抱き締め返したのだった。


「葛城さん大好きです………」


 阿川は最後に自分の想いを口にすると、抱き締めた腕をほどいたのだった。その瞬間、葛城は腕の中から解放されると、ただ胸の奥が切なくなった――。



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