そこからはじまる恋!
この気持ちを言葉にするなら……2
「えっと…あとそうでした。葛城さんが来ない間に俺が代わりに仕事片付けておきました。だってそれって俺のせいでもありますし、それに放っておきますと貴方の机にドンドン仕事が溜まると思いましたから――。それに今だから言えますけど、戸田って結構イヤな奴なんですよね。貴方のことばかり嫌がらせしてるのみれば解りますよ」
阿川は彼にそう話すと、自分の頭を触りながら少し笑った。そして、再び真剣な表情で話しかけた。
「だからお願いです葛城さん、俺のせいでここを辞めないで下さい! 俺は貴方に辞めて欲しくないんです!」
彼はそう話すと葛城の前でお辞儀したのだった。その姿は心のそこから、彼に対して謝罪の気持ちで一杯だった。葛城は阿川の詫びる姿に心を乱されたのだった。
葛城は彼の前で顔を覆うと、深いため息をついて話した。
「……本当にお前ってヤツは勝手だな。全部、自分の勝手な都合ばかりだ。俺の気持ちも知らないでよくそんなことが言えるな――」
「葛城さん……」
阿川は彼からそう言われると、ゆっくり頭を上げて葛城の目をジッと見つめた。
「お前にひとつ、聞きたいことがある……」
「どうしてあの時…――」
「あの時……?」
葛城は阿川の顔を真っ直ぐ見つめると、フとあることを口にした。
「………あの時、俺を無理やり抱いた夜。どうしてお前は次の朝、隣に居なかったんだ…――?」
「えっ……?」
阿川は彼のその質問に、その場で唖然となりながら黙りこんだ。
「そのことですか…――」
阿川は葛城からそのことを聞かれると、一瞬だけ口を噤んだ。そして背中を向けると空を仰いで話した。
「………俺ですね、こう見えても臆病だったりするんですよ。知ってましたか?」
「阿川……?」
「あの時は勢いで貴方に酷いことしてしまったけど、貴方を抱いたあと自分の罪悪感に耐えられなくなったんです……。何より、葛城さんが目を覚ましたあとが怖かった。葛城さんの事が好きだったから、だから貴方に嫌われるのが一番怖かった。あんな大胆なことした癖に、何言ってるんだって感じなんですけど……。でも貴方の口から嫌いって言われたらまともに立ち直れそうにもなかったんで、だからあの時は貴方から逃げてしまいました。ごめんなさい……最低ですよね。好きだとか言って自分を無理やり抱いたヤツが、目を覚ましたら隣に居なかったなら俺が貴方でも怒りますよ」
阿川は葛城から背を向けたまま、自分の思いを打ち明けた。葛城は彼からその話を聞かされると、再びため息をついた。そして、自分の顔を手で押さえたのだった。あいつからその話を聞かされると、自分の顔を右手で押さえてため息が漏れた。
――正直驚いた。俺に散々酷いことした癖に、あれは臆病者がする域を越えていた。むしろ“怖さ”を知らない者がすることだ。大胆で恐れを知らない。
なのにあいつは、俺にしたことが怖くなって逃げ出したらしい。
理由は嫌われるのが怖かったそうだ。
……俺はそれを聞いて呆れた。そして、あいつのことを変なヤツと思ったのと同時に、意外に気が小さい所もあるのだと知った。そう思うと自分の中でスッと怒りが治まってきた。そこで拍子抜けすると、俺はあいつの目の前で力が抜けたように只笑ったのだった。
「おかしいですよね。あんな大胆なことしたのに、貴方に嫌われるのが怖かったから逃げ出すなんて……あんなのは卑怯者がすることですよね? 自分でも解ってます。でもあの時はそうでもしないと自分がダメでした……」
阿川はそう話すと、後ろを振り向いて俺の瞳をジッと見つめてきた。その強い眼差しに俺は、あいつの瞳を見つめ返した。
「……お前がとんだ臆病者だったとはな。あんなことした癖にホント聞いて呆れた。俺は少なくてもあの時、お前が隣にいたら許すことも出来た」
「えっ……?」
葛城は阿川にそう言い返すと、見つめた瞳を僅かに反らしたのだった。
阿川は彼にそう話すと、自分の頭を触りながら少し笑った。そして、再び真剣な表情で話しかけた。
「だからお願いです葛城さん、俺のせいでここを辞めないで下さい! 俺は貴方に辞めて欲しくないんです!」
彼はそう話すと葛城の前でお辞儀したのだった。その姿は心のそこから、彼に対して謝罪の気持ちで一杯だった。葛城は阿川の詫びる姿に心を乱されたのだった。
葛城は彼の前で顔を覆うと、深いため息をついて話した。
「……本当にお前ってヤツは勝手だな。全部、自分の勝手な都合ばかりだ。俺の気持ちも知らないでよくそんなことが言えるな――」
「葛城さん……」
阿川は彼からそう言われると、ゆっくり頭を上げて葛城の目をジッと見つめた。
「お前にひとつ、聞きたいことがある……」
「どうしてあの時…――」
「あの時……?」
葛城は阿川の顔を真っ直ぐ見つめると、フとあることを口にした。
「………あの時、俺を無理やり抱いた夜。どうしてお前は次の朝、隣に居なかったんだ…――?」
「えっ……?」
阿川は彼のその質問に、その場で唖然となりながら黙りこんだ。
「そのことですか…――」
阿川は葛城からそのことを聞かれると、一瞬だけ口を噤んだ。そして背中を向けると空を仰いで話した。
「………俺ですね、こう見えても臆病だったりするんですよ。知ってましたか?」
「阿川……?」
「あの時は勢いで貴方に酷いことしてしまったけど、貴方を抱いたあと自分の罪悪感に耐えられなくなったんです……。何より、葛城さんが目を覚ましたあとが怖かった。葛城さんの事が好きだったから、だから貴方に嫌われるのが一番怖かった。あんな大胆なことした癖に、何言ってるんだって感じなんですけど……。でも貴方の口から嫌いって言われたらまともに立ち直れそうにもなかったんで、だからあの時は貴方から逃げてしまいました。ごめんなさい……最低ですよね。好きだとか言って自分を無理やり抱いたヤツが、目を覚ましたら隣に居なかったなら俺が貴方でも怒りますよ」
阿川は葛城から背を向けたまま、自分の思いを打ち明けた。葛城は彼からその話を聞かされると、再びため息をついた。そして、自分の顔を手で押さえたのだった。あいつからその話を聞かされると、自分の顔を右手で押さえてため息が漏れた。
――正直驚いた。俺に散々酷いことした癖に、あれは臆病者がする域を越えていた。むしろ“怖さ”を知らない者がすることだ。大胆で恐れを知らない。
なのにあいつは、俺にしたことが怖くなって逃げ出したらしい。
理由は嫌われるのが怖かったそうだ。
……俺はそれを聞いて呆れた。そして、あいつのことを変なヤツと思ったのと同時に、意外に気が小さい所もあるのだと知った。そう思うと自分の中でスッと怒りが治まってきた。そこで拍子抜けすると、俺はあいつの目の前で力が抜けたように只笑ったのだった。
「おかしいですよね。あんな大胆なことしたのに、貴方に嫌われるのが怖かったから逃げ出すなんて……あんなのは卑怯者がすることですよね? 自分でも解ってます。でもあの時はそうでもしないと自分がダメでした……」
阿川はそう話すと、後ろを振り向いて俺の瞳をジッと見つめてきた。その強い眼差しに俺は、あいつの瞳を見つめ返した。
「……お前がとんだ臆病者だったとはな。あんなことした癖にホント聞いて呆れた。俺は少なくてもあの時、お前が隣にいたら許すことも出来た」
「えっ……?」
葛城は阿川にそう言い返すと、見つめた瞳を僅かに反らしたのだった。
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