そこからはじまる恋!

成瀬瑛理

決意2

「いつ……!? それはいつだっ!?」

「かっ、葛城……!?」

 柏木は彼に胸元を掴まれると、少し驚いた表情で応えた。


「えっと……たぶん、お前がくる15分前くらいか?」


「何っ……!?」


「俺も詳しい話しは知らないが、何でも戸田課長のオフィスから阿川が出てくるのを見たって奴がいるんだ。それでそいつが中に入ると、戸田課長が取り乱した様子で椅子から倒れていたって……」

 柏木がそう話すと、葛城は頭の中がカッとなった。そして、その場で居ても立っても居られなくなった。


「それで戸田課長の机に阿川が出した退職届けが……って、おい!」


 彼が話している最中に葛城はいきなりどこかに走り出した。柏木は彼がいきなり走り出すとそこで呼び止めた。


「おい葛城、お前どこに!?」


「って言うか鞄……!」


 柏木が呼び止めると葛城は自分の鞄を床に落としたまま、どこに走り去って行った。彼の慌てた様子に柏木は驚くと、落ちている鞄を拾って首を傾げたのだった。



 どう言うつもりだ阿川……!



 俺が退職しようと思った矢先に何でお前が退職するんだ……!
 しかも俺がくる15分前にだと……!?


 あいつ……! 阿川っ……!
 何を考えているつもりだ……!
 俺より優秀なお前が何でここを辞め……!


 その瞬間、自分の中で思い当たることがあった。
 そう思うといきなり足が止まった。



 クソッ……!



 俺はそこで立ち止まると、顔を押さえて情けなくなった。そして、あいつのことを思うと少しずつ気持ちが揺れたのが分かった。



 バカだ。あいつは大バカだ。そして俺も…――。



 廊下の真ん中で立ち止まると、あいつに対して色々な感情が胸の中に一気に押し寄せた。そして、自分の拳を握ると再びそこから走り出した。



--営業部に入るとすぐに課長室へと向かおうとした。ズラリと並べられたパソコンには所々に机が並べられていた。そして、空間ごとにパーティションで仕切られていた。大部屋の中を歩いて移動すると奥の部屋が課長室だった。


 俺は周りの同僚に挨拶をしないまま、課長室に真っ先に向かおうとした。すると途中で誰かに声をかけられた。


「よう葛城、やっと今日は出勤か?」


「すまん萩原。今はお前にかまってる暇はないんだ。あとにしてくれ――」


「冷たいな葛城。あっ、そうそう。お前が1週間休んでいた時に、阿川がお前の代わりに仕事を片付けていたぞ?」


「何っ……!?」


 その話しに葛城は足が止まった。萩原はそう話すと、彼の机を指差した。その指先の向こうは葛城が使っているワーキングデスクだった。その机の上には報告書や書類の山が築かれていた。

 彼が休んでいる間の7日分の仕事量が溜まっていた。葛城はそれを目にすると軽くため息が漏れた。そして、その置かれた山からクリアファイルを何気なく手に取った。中を見て確認すると、売上報告書は既に完成した状態だった。そして、他の書類もほぼ完成していた。葛城はそのことを知ると身体中が震えた。



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