そこからはじまる恋!

成瀬瑛理

空白の時間2

 もう思い残すことは何もない。それに阿川のことを考えなくて済む…………。

 全部は自分のつまらない嫉妬だった。一人であいつに嫉妬して妬んで、そのたびに自分が嫌になって、嫌いになって、何もかもあいつのせいにした。

 きっとその付けが回ったんだ。だからもうあいつのことは忘れよう。その方がいい。きっともう二度と、あいつと顔を合わすことはないだろう。

 あの日の夜のことは夢だった。
 俺は夢を見ていたんだ。
 あいつが俺のことを好きって言ったのも夢で、あいつに抱かれたのも夢だ。


 あの日は本当は何もなかった。
 そして、阿川があの駅に一緒にいたのも夢だ。


――でなきゃなんであいつは次の日、俺の傍にいなかったんだろう。



 俺は男だ。あいつの気持ちには応えられない。
 応えられるはず…――。





「うっ……!」




 その瞬間、自分の頬に涙が零れ落ちた。
 あの日から情緒不安定だ。

 どうして悲しいのかも解らない。
 なのに涙が勝手に落ちてくる。

 俺は自分の口を押さえると、そのまま涙を流した。

 あの日からずっと泣いてばかりだ。
 きっとこれはあいつのせいだ。
 そして、この胸の痛みも全部…――。



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