そこからはじまる恋!

成瀬瑛理

空白の時間1

 そのあと俺は訳もわからず泣いた。そして、何も考えられなくなると疲れたままベッドの上に倒れ込むように眠ってしまった――。


 その日は出勤だったが、行くきも失せていた。それに疲れた。一歩も動けない。だから体調不良を理由にその日は会社を休んだ。そして、その次の日も同じ理由で休んだ。


 行ったらあいつがいる。
 それにどんな顔で会えばいいのか解らない。


 きっと前見たいには戻れない。
 あいつも大人なんだ。
 そんなことぐらい解っているハズだ。


 俺は自分の気持ちの整理がつかないまま、何も手につかない状態が続いた。そんな時から自然と、このまま会社を辞めようと思いじめたのだった――。

 もともと俺はそんなに売りあげ成績が、優秀じゃなかった。それに課長にも期待はされてなかった。きっと俺が会社を辞めても、誰も何もおもわないだろう。俺の使っているデスクに空きがあいて、そこに新しい奴が入ってきて使うんだろう。

 入社して2年目なのにまだ課長に怒られている。お前の代わりはいくらだっていると、いつも言われたりした。


 正直言って辛い。
 死のうかと何度も思ったりした。


 普通に大学を卒業して、普通にどこかの会社に就職してサラリーマンになって、普通の人生を歩んで、誰かと結婚して、このまま歳をとるんだと思っていた。なのに人生は思うようには行かない。どっかで失敗して躓いて怒られて、時に起き上がれないくらいの精神的な辛さを味わって、悔しい思いしてみんな生きてるんだもんな。俺も同じだ。子供の頃に成りたかった夢なんて大人になると大概忘れる。きっと俺が子供の頃に描いていた夢は、こんなハズじゃなかった。


 もっと明るい未来が見えていた。なのに俺は一体どこから道を道み外したのだろうか……? きっと夢を諦めた時点で、それは只の夢になったのかも知れない…――。


――会社を休んでから5日目が過ぎた。俺は何もせずに、部屋のベランダから外の風景を眺めていた。缶コーヒーを片手にタバコを一本、口にくわえて吸った。


 外の風は心地いい。何もかも優しく包んでくれる。俺は自分の気持ちの整理がつかないまま、これからのことを一人で考えた。


 この際、地元の故郷に帰ろうかと思った。もともと両親は俺が東京に行くことを反対していた。地元に帰れば両親は喜ぶだろう。それにここよりかはマシだ。そんなことを思うと、急に故郷に帰りたくなった。


 まずは会社を辞めてから考えよう。
 それから自分がしたいことを見つければいい――。


 俺はベランダから部屋の中に目を向けた。テーブルの上にはさっき書いた退職届が置かれていた。


 

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