そこからはじまる恋!

成瀬瑛理

残り火1

 あいつに無理やり抱かれた俺は、あのあと気を失った。そして気がついて目を覚ますと、いつの間にか朝になっていた。

 目を覚ました俺は、駅のホームのベンチで寝かされていた。乱れた服も元どおりになっていた。まるで昨日の出来事が嘘のようだった。

 一瞬、あいつに抱かれたのを思い出した。すると、身体中が急に熱くなった。無理やり抱かれたとは言え、最後は自らあいつを求めてしまった。そう思うと、俺の中で何かが変わろうとしていた。フと気がつくとあいつの姿はなかった。そして俺は一人、駅のホームに取り残されたのだった――。






「阿川………?」





――あのあと探してみたが、阿川の姿はどこにもなかった。人の体を散々好き勝手に弄って、最後は無理やり抱いた癖に、朝になったらあいつは勝手に姿を消していた。そして、駅のホームのベンチに座ったまま、俺は半分方針状態になって考えた。

 動くと体が痛くてしょうがない。ついでに身体も臭いし、気分は最悪だ。それにまだあいつが俺の中にいるようだった。あいつの一方的な片想いに俺は振り回されて、最後はヤられた。


 男なのにレイプされて、そのレイプした相手に最後は抱いて欲しいと懇願した。我ながらに情けない。いくら理性が切れたからと言って、あいつを求めるなんて自分でも信じられなかった――。


 俺は普通の人間だ。男なんか好きになるはずない。
 あいつの気持ちにも応えられない。
 それが正しい答えだ。それが当たり前だ。
 同じ同性を好きになるなんてどうかしているとしか思えない。



 なのに……




 俺は……





 誰もいない朝の駅のホームで、俺はベンチに座ったまま、一人考えた。


 答えなんて直ぐに出せない。
 それに今はすごく疲れたし、眠い。


 何も考えたくない……。


 俺はぼんやりとした頭でそう考えると、自分のジャケットからタバコの箱を取り出して、それを一本、口にくわえるとライターに火をつけて吸った。

 完全に思考に蓋をすると、何も考えずにタバコを吸い続けた。そして、目の前に広がる田園には朝日が射していた。空には雀が鳴いて飛んでいた。空気も澄んで、清清しい朝だった。

 なのに俺はちっとも清清しい気分じゃなかった。遠くから電車がくる音が聞こえてくると、俺はタバコを地面に落として足で消した。そして重たい身体を起こしてベンチから立ち上がった。

 遠くの方から電車がくると、俺は始発の電車に乗り込んで家に帰宅した。誰も乗ってないのが幸いだった。何せ今の俺は臭い。自分でも解る、最悪の気分だ。昨日の夜あいつに体を好き勝手にやられて、身体中をザーメンまみれにされた。

 おまけに犯されて写真まで撮られた。
 今になってはもう怒る気力もどこかに失せていた。


 ただ今は身体中が痛い。そして、眠い。


 家に帰ったらシャワーを浴びよう。
 そして、ご飯を食べて寝よ。


 電車はゴトゴトと揺れ、次第に景色は、のどかな田園の風景から都会の風景へと移った。俺はボンヤリとした頭であいつのことを考えた――。




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