そこからはじまる恋!

成瀬瑛理

二人きりの駅7

「――自分、葛城さんに嫌われてたのは知ってましたよ。でも、やっぱり本人に直接言われると何だかキツいですね……」

「ッ……!」

「確かに葛城さんって性格キツいし、真面目で難しい人ですけど、俺はそんな葛城さんが先輩で良かったなって思います。ここに入って来た頃は、俺なんてまだ全然未熟で、右も左もわからなくて、葛城さんの足ばっかり引っ張ってたけど、俺に色々と教えてくれたのはそんな貴方でした……!」

「あっ、阿川……!?」

「だから俺、葛城さんみたいに仕事が出来る男になりたいってずっと思ったし、葛城さんのことを尊敬してました……! 葛城さんの足引っ張らないようにってガムシャラに仕事頑張ってたら、なんかいつの間にか立場が逆転しちゃったって言うか、なんかそんな変な流れになっちゃったみたいで……。てか、そうなっちゃったんですよね……? そしたらいつの間にか売り上げ成績も葛城さんよりも伸びて来て、それが目立ったって言うか、その省で逆に葛城さんが、戸田課長に怒られるようになって……。その、なんか自分でも上手く言えないですけど葛城さんには本当迷惑かけたなって自覚してます…――!」

「っ……!」

「こんな後輩がいたら確かに嫌ですよね。貴方に嫌われて当然だと思います」

「そ、そんなことは……!」

「――でも、それでも俺は貴方に一人の男として認めて欲しかったんです……! 仕事が出来る男だって、一人前の男だって、貴方に……!」

「あがっ……」

 阿川は彼に面と向かって話すと、真剣な眼差しでみつめた。その射抜くような眼差しは反らせなかった。葛城はそんな彼の眼差しを見つめ返した。

「俺にとって葛城さんが目標でしたから……!」

「あっ、阿川…――!?」

「葛城さんの売り上げ成績が伸び縮んだのも俺のせいですよね!? 俺が葛城さんの分まで頑張っちゃうような要領が悪い男ですみません……! 俺バカだから貴方の気持ちまで考えずにやってました……! それで葛城さんがずっと苦しんで嫌な思いをして……!」

 阿川はそう話すと地面に頭を下げで土下座をした。いつもはヘラヘラしているような男が、この時はかっこよく見えた。葛城はそんな阿川の真剣な話を前に同様しながらも魅入られたのだった。

「違うんだ阿川……! 俺の方こそ下らない嫉妬で、お前のことをずっと妬んでいた……! こんな奴がお前の先輩だなって失望しただろ……!? 本当の俺はこんな奴なんだ! お前の前では偉そうにして、なんでもできた奴にみえても、中身はこんな奴なんだよ!! 妬むくらいならお前よりも、もっと頑張んなきゃいけないのに俺はそんな事さえ見失っていた……! 謝るのは俺の方なんだ! 阿川、お前に迷惑ばかりかけてすまなかった……! 今まで散々八つ当たりしてコキつかって、酷いことをしたことをどうか許して欲しい……! お前に何度か仕事を手伝ってもらった時、本当は有難うと言いたかった……! でも、そんな簡単なことさえ言えないくらい俺はダメな奴になって……! 本当に……本当にっ……本当にすまなっ……! わぁああああああああーーっっ!!」

 葛城は両手を地面について頭を下げると、逆に彼の前で土下座をして謝った。そして、大声を出して泣いた。誰もいない真夜中の駅に、1人の男の悲しみの声と懺悔の声がこだました。阿川は泣き伏せる葛城に何も言えずに黙って口を閉ざしたのだった。 


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