そこからはじまる恋!
二人きりの駅5
突然、暗闇の中から母親の声が聞こえてきた。それはいつかの電話での会話だった。 何故こんな時にそれが聞こえてくるんだろう、俺は恐怖心から逃げるようにそこから必死で走った。すると今度はどこからともなく、彼女の声が暗闇の中から聞こえてきた――。
あのね、信一さんお話があるの。
私、貴方には相応しくないわ。
もう別れましょ。その方がお互いのためよ。
私ほかに好きな人がいるの。
ええ、そうよ。だから貴方とはもう付き合えない。私、憲二さんが好きなの。憲二さんは貴方よりも優しいわ。真面目でしっかりしてて、貴方よりも大人だもの。もう曖昧な関係とかウンザリなの。女の幸せは貴方にはわからないわ。
そう、じゃあ、これで終わりね。きっと私、二度と貴方には会わない気がするわ。さよなら信一さん。
何故だ……! 暗闇の中から、今度は別れた彼女の声が聞こえてきた。
そんなばかな……! 何故、響子の声が……! や、やめろ……! やめてくれ……! こんなこと思い出させるな……!
くっ、くそぉっ!!
もうなにが何だかわからずに、俺は逃げるように廊下を突っ走った。そして、階段をみつけると一気に上へとかけ上がった。するとそこで今度は誰かの会話が聞こえた。
はじめして、新人の阿川慶介です。どうぞみなさん宜しくお願いします!
今日から入った新人だ。みんな仲良くしろよ!
凄いな阿川。新人なのに成績優秀じゃないか。売り上げ成績も伸びてるし、きみは我社の期待の新人だよ。全くどこかの誰かさんとは違って、よく頑張ってるじゃないか。阿川君、きみには私も期待しているよ。
――なんだ葛城、この報告書は!? お前はまともに仕事も出来ないのか!? こんな報告書はダメだ! 今日中にやり直せ! ホントお前は、ろくに仕事が出来ないな! 今から阿川にでも手伝ってもらえ! お前、新人に抜かれて悔しくないのか!? 阿川はお前よりも優秀で頑張ってるぞ! 2年も過ぎたのにまだ新人気取りなら、こんな仕事今すぐ辞めらどうだ!? いっとくがお前がいなくても代わりはいくらだっているんだぞ!
――ねぇ、ちょっと聞きましたか? 眼鏡をかけてる大人しそうな人です。葛城さんですよ、ここの所ずっと売り上げ成績が伸びてないらしいですよ。ほら、課長にいつも怒られてる人です。
ああ、そうだよな。あれじゃ、売り上げ成績も伸びないでしょ? 葛城と違って新人の阿川は、入った時から優秀だから課長も一目おいてるみたいらしいよ。なんかこのままだと、葛城よりも先に阿川の方が出世しそうだよな。 
ホントだよ、まったくどっちが先輩なのか分からねーよな。葛城の奴、阿川の事ライバル視してるみたいだぜ? ま、どんなに頑張っても阿川には到底かなわないだろ?
バーカ、お前それ言い過ぎだろ。聞こえるだろ~? 本人いるんだからさー。あははははっ。俺はあの歳で窓際族になるのだけはゴメンだぜ。
『うわぁああああああっっ!!』
暗闇の中から会社の同僚達の声が聞こえてくると、俺は叫びながら走った。自分の脳裏に辛い記憶が一瞬で甦った。それは凄く最低な気分だった。出来れば、このまま思い出したくもない記憶だ――。
あのね、信一さんお話があるの。
私、貴方には相応しくないわ。
もう別れましょ。その方がお互いのためよ。
私ほかに好きな人がいるの。
ええ、そうよ。だから貴方とはもう付き合えない。私、憲二さんが好きなの。憲二さんは貴方よりも優しいわ。真面目でしっかりしてて、貴方よりも大人だもの。もう曖昧な関係とかウンザリなの。女の幸せは貴方にはわからないわ。
そう、じゃあ、これで終わりね。きっと私、二度と貴方には会わない気がするわ。さよなら信一さん。
何故だ……! 暗闇の中から、今度は別れた彼女の声が聞こえてきた。
そんなばかな……! 何故、響子の声が……! や、やめろ……! やめてくれ……! こんなこと思い出させるな……!
くっ、くそぉっ!!
もうなにが何だかわからずに、俺は逃げるように廊下を突っ走った。そして、階段をみつけると一気に上へとかけ上がった。するとそこで今度は誰かの会話が聞こえた。
はじめして、新人の阿川慶介です。どうぞみなさん宜しくお願いします!
今日から入った新人だ。みんな仲良くしろよ!
凄いな阿川。新人なのに成績優秀じゃないか。売り上げ成績も伸びてるし、きみは我社の期待の新人だよ。全くどこかの誰かさんとは違って、よく頑張ってるじゃないか。阿川君、きみには私も期待しているよ。
――なんだ葛城、この報告書は!? お前はまともに仕事も出来ないのか!? こんな報告書はダメだ! 今日中にやり直せ! ホントお前は、ろくに仕事が出来ないな! 今から阿川にでも手伝ってもらえ! お前、新人に抜かれて悔しくないのか!? 阿川はお前よりも優秀で頑張ってるぞ! 2年も過ぎたのにまだ新人気取りなら、こんな仕事今すぐ辞めらどうだ!? いっとくがお前がいなくても代わりはいくらだっているんだぞ!
――ねぇ、ちょっと聞きましたか? 眼鏡をかけてる大人しそうな人です。葛城さんですよ、ここの所ずっと売り上げ成績が伸びてないらしいですよ。ほら、課長にいつも怒られてる人です。
ああ、そうだよな。あれじゃ、売り上げ成績も伸びないでしょ? 葛城と違って新人の阿川は、入った時から優秀だから課長も一目おいてるみたいらしいよ。なんかこのままだと、葛城よりも先に阿川の方が出世しそうだよな。 
ホントだよ、まったくどっちが先輩なのか分からねーよな。葛城の奴、阿川の事ライバル視してるみたいだぜ? ま、どんなに頑張っても阿川には到底かなわないだろ?
バーカ、お前それ言い過ぎだろ。聞こえるだろ~? 本人いるんだからさー。あははははっ。俺はあの歳で窓際族になるのだけはゴメンだぜ。
『うわぁああああああっっ!!』
暗闇の中から会社の同僚達の声が聞こえてくると、俺は叫びながら走った。自分の脳裏に辛い記憶が一瞬で甦った。それは凄く最低な気分だった。出来れば、このまま思い出したくもない記憶だ――。
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