きみの隣にいるだけで幸せだったと気づいたのは

ノベルバユーザー439854

#13 意識してもらおう

今日の部活のトレーニングの時間は、悠也の恋愛に関する会議に変更となった。先生に見つからないように、廊下の隅っこに輪になって座る。

いつもは僕たちのおふざけを止める役割の先輩も、今日ばかりはノリノリだ。これだから、お年頃の高校生男子は。

「ちょっとみんな、声がでかい。体育館にいる人全員に聞こえちゃってるって」

開口一番、悠也は先ほどのことについて釘を刺した。友達にいじられるのはまだ耐えられるが、知らない人にまで知られるのは、耐えられなかった。

しかし、チームメイトからは、怒涛のような反撃が飛んできた。

「何恥ずかしがってんだよ」
「みんなに知ってもらった方が、味方が増えていいって」

この熱量で押されると、そういうものなのかと思ってしまう。

でも、思い当たる節はある。

僕は、今までは人を好きだということを、誰かに批評されるのが怖かったんだろう。
「お似合いじゃないよね」「釣り合ってないよ」と言われるのを、心のどこかで恐れていた。

その他人の目を気にした考え方が、そもそも間違っていたのだろうか。それが原因で一歩を踏み出せていなかったのか。

「それに、勝手に有季さんにも伝わるしな」

体育館で悠也が1番気にしていたことを言われて、肩がビクッとなった。本人に知られるのは、想像しただけで顔が熱くなる。

「……それって、いいことなのか?」

恐る恐る言ってみた。すると、今度はみんなにため息をつかれてしまった。諭すような顔で、こう言われる。

「お前さ、例えば噂で、『〇〇さんがお前のこと好きらしい』って聞いたら、どうだ?」

そっ、それは……とてつもなく嬉しい。というか、もうその子のことを正面から見れないだろう。

……そういうことか!

「わかったか」

悠也の反応を見て、チームメイト達はやれやれと行った感じだ。

「つまり、有季さんに、こっちのことを意識させるんだよ」

なるほど。いくら有季さんといえども、こっちが好きだってわかったら、僕のことを意識してくれるだろう。それは、付き合うためのすごい近道かもしれない。

本人に好きだってことを知られるのは、めちゃくちゃ恥ずかしい。今までの僕なら、考えられない。

けれど、もうどうせ周りに知られてるんだ。このさい、本人に知られるもクソもない。

こうやって強引にでも背中を押してくれるのは、この仲間たちのすごくいいところだ。

やっぱり、好きな人がバレて良かったかも知れないと、悠也は思った。

________
続く……


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