異世界の死の商人

ワナワナ

第三十五話 自分だけ不景気

 ここは帝都だ。今俺は戦勝パーティーに招かれている。ついさっきまで内戦してたとは思えないほど豪華でびっくりした。斜線の旗が中央に飾られている。


「あっちにいるのが連合王国の外交官。あとは親戚ばかりよ。」


「アイス……連合王国って?」


「十年以上うちの国と戦争してる敵国よ。と言ってもお互いに海賊をけしかける程度で本気でぶつかったことはないわ。」


 海賊ね……そういえば港湾都市で初めて人を殺したのはあの時か。略奪許可証もそういう理由があったのか。


「帝国の周りにあるのは一国だけ?」


「そんなことないわよ。でも大陸にある周りの国は親戚ばかりだから覚えなくていいわ。ただ……。」


「ただ?」


「ずっと東には東の大帝国があるわ。この国は私達のコントロール下にないのよ。」


 俺の世界地図って国は書いてないからこの情報はありがたい。


「分かった、ありがとう。」


 今ここに来てるのは残念ながら俺と彼女だけだ。ちなみにあの手紙は結局、アイスの手に戻ってしまった。いつか取り返す。


「どこに行くの?」


「商売しに行く。」


 戦争が終わっても売れる武器とは何か?俺なりに真面目に考えてみた。革命軍が現在主力にしているのはAK-47で他には装甲兵員輸送車と戦車と汎用機関銃だけだ。まだ足りない物がたくさんある。


 スナイパーライフル、自走砲、迫撃砲、高射砲、無反動砲、列車砲、あとは海軍に空軍に以下略。むしろ真面目に考えてあれだけの兵器でよく勝てたと関心した。リベレがさらっと勝利しているのってずいぶん戦術と戦略に依存している気もする。


「誰にセールスするつもり?」


「革命軍。」


 それ以外の大口の販路が一つも無い。だけど他国の軍隊に売ると後ろ指さされそうで怖い。より利益を上げるにはこの国の経済力を上げて軍隊の予算を増やして貰うしかない。


















 それで早速ターゲットの所に行くと女性に囲まれてて可愛そうだった。なんとかしてリベレに話しかける。


「というわけでリベレ武器いらない?」


「……ユータ本当にすまない、一番安そうなRPG-7を百個で勘弁してくれ。もう金が無い……。王都にも他の王国直轄地も全く金が無かったんだ。支払いも分割になってしまっていて申し訳ない。」


「国庫を潤す策は?」


「貴族への課税とあともう一つあるけど機密だ。」


 お金が降ってきたら何でも買うぜ!って冗談で言われた。そう簡単にはいかないな。金鉱とか見つかったらな……。ん?あれ確か……。


「新大陸の資源開発はしないの?」


 リベレは国家俯瞰っていう特殊なスキルがあるから新大陸の資源を把握しているんじゃないか。


「やりたいのは山々だがあそこはお前の土地だろ。国だけだと出来ない。」


 ただこのまま何も使わないと潜在的にはすごい価値を持っていても今は負債になってしまう。持っているだけで損何て無意味だ。


「まぁ考えといてくれ。」


 残念。せっかくのパーティーだから他の人にも話して見るか。きっと誰か一人くらい興味を示してくれるかも。
















 結果?聞かないでも分かるだろ。軍需産業が戦争を求める理由が分かった。


「……誰もお金持ってないね。」


「正確には今武器を買うほど裕福な人ね。平和だから仕方ないわよ。」


 戦争は必要の母か……。やっぱり民需に転換してこの国の経済力の底上げが必要か。


 そうして真面目に考えていたのに彼女は俺の頬をつついて遊ぶ。


「あほばないでくれますか。」


「ふふっ、もう少しユータが大きくなったら考えるわね。」


 後数年の辛抱だ。今に見てろよ。今反撃したいけどこのパーティーには偉い人しかいない。そんな場所ではいつものようにいちゃいちゃする訳にはいかない。


 ピタリと彼女の手が止まる。俺の願いが届いたって思ったけど違う。誰かが近づいてくる。彼女は目にも止まらぬ早さで公的な雰囲気へ変えた。


 誰だろう?こう見えても彼女は皇族だ。そんな彼女がここまで礼儀正しくなるのは相当に偉い人?


「ほう……君が噂に聞くあの武器商人か。アイスとは仲良くやれてるかな?」


 ストレートに聞かれると恥ずかしい。彼女に助けを求めると、頬を赤らめて俺の後ろへ隠れてしまった……。いつも俺にはそんな反応しないから可愛かった。


「まぁそれなりに。」


「……その様子を見て安心した。今後も頼む。」






 結局誰なのか分からなかった。その人が去ってから彼女と話す。


「あの人知ってる?」


「……不意打ちだったわ。皇帝陛下で私の叔父でもあるのよ。」


「……武器を売り込んでみればよかった……。」


「その感想なの!?」


 彼女がいつもと違う反応をしていて楽しい。今なら俺でも翻弄できそうだ。


「そういえば名字って決まったのかしら?」


 その話題はずるい。俺の今の弱点を的確についてる。


「一応……。」


「私に教えてくれない?」


「まだミーラにも教えてないから駄目。」


「……もしミーラさんより先に教えてくれたら私何でもするわよ。」


 ドキッとした。男の子に対して何でもという言葉は意思を揺らがせる力を持っている。いやでもここで教えたら……しばらく悩んでから結論を出す。


「なら、手紙を返してくれたら良いよ。」


「そ、そんなに欲しいの?でもあれは……。」


「何でもって言った。」


「何でもって言った。」


 無慈悲に二回追撃する。そのおかげか彼女は両手で手を隠してから小さく言った。


「分かったわ。…………。」


「小さくて聞こえない。」


「っ〜人に見せたら駄目よ。」


 いつもは余裕そうな彼女だけど今日はお互いなれない場で違った一面が見れて可愛かった。


「それで名字は何かしら?」


「……。」


 俺は彼女の耳元で囁いた。どうせ明日なればみんな分かるけど一番最初に知ったという特別感が良いのだろう。


























 二日目になって帝国憲法が読み上げられたり色んな人が勲章や役職をもらったりそういう形式的に大事な事が行われた。


「ユータにフェレイラと伯爵位を与える。これよりユータ・フェレイラ伯爵と名乗るが良い。」


 後はひたすら眠い中他の人の論功行賞を見ていた。中央に飾られた帝国の国旗は非常にシンプルだ、なんせ王国の国旗に斜線を引いただけ。このぐらい単純に式典もしてほしい。




















 記憶が飛んでいるがなんとか帝都の宿へ帰ってきた。時刻は夜。帝都は今たくさんの人が来ていて4人で一部屋しか取れなかった。二段ベッドが二つある小さな部屋だ。下のベッドに座って話す。ろうそくの光だけで暗い。




「伯爵……すごいです。ユータ様はこれから領地経営でもするんですか?」


「しないよ。そもそも帝国は中央集権と平等を目指してるからこれまでの統治方法とは違うと思うよ。」


「要はただの名誉職よ。良いことはせいぜい貴族院の議員になれるくらいね。」


 なれるであってなるとは言っていない。


「フェレイラ・百希か……。」


 一人だけ妄想の世界を旅している。百希の中ではもう俺と結婚してしまったのだろうか。俺は彼女の前で手を振る。


「!?いつの間に僕の前に?」


「最初から。」


「……あっそうだこれ渡しとくよ。読んでね。」


 百希は露骨に話題を変えたいのか書類を俺に渡す。でも書類を落としてしまった。式典の疲れのせいか眠い……。鋭敏にミーラはそれを感じ取ったのかみんなに寝るように勧めてろうそくの明かりを消してしまった。


「もう夜も遅いですし寝ましょう。今日は私がユータ様の隣ですね。」


 最後の言葉は少し嬉しそうだった。この後彼女が獣人の暗視を活かしてベッドに潜り込んで寝かしつけてくれたけどそれは別の話。

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