異世界の死の商人
第二十話 商会設立
時刻は午前七時だ。俺が珍しく早起きをしたのは目の前の彼女、ミーラに起こされたからだ。ここは城塞都市の宿の食堂で俺はミーラから話を聞いていた。現在彼女には悩みがあるらしい。窓際のテーブル席で向かい合って彼女と話す。
「ふと、思ったんですよ。私って現在無職じゃないですか?」
「そうだね。大丈夫俺が養うよ。」
彼女は深刻そうに俺に打ち明ける。普通に暮せば一生安泰な程のお金があるから正直、俺にとってはたいした問題ではない。彼女は一瞬嬉しそうにしたが首を振って真顔に戻った。
「ユータ様に甘えているとダメ人間にされそうです。」
「…………確かに。」
適当に相槌を打つ。というかミーラがダメ人間だ何て一度も思った事が無い。もし彼女がそうなら俺は人間と認められるかも怪しい。
「そこでですね、私今日から働こうと思います。」
労働?働く?目の前にもっと楽な道があるのに自分を律せるミーラは絶対ダメ人間じゃない。金貨を賭けても良い。彼女は俺の反応を伺っている、
「……、俺が雇うよ。それでこの話は解決する。」
「全然してないです。第一、私が担保だった時にも役に立ててたか怪しいじゃないですか。」
「え?そうなの?」
「はい……私とユータ様で島にいる時、少しは役に立とうと思って廊下を掃除してたんですよ。」
全然知らなかった。多分その時は俺は寝ていた気がする。正直、俺にとってはたいした問題ではない。ミーラは偉いな。
「そうしたら、隣で丸い機械が私よりも掃除してたんですよ。」
あぁ自動掃除ロボね。基地にそんな物もあったな。たまに廊下を歩いてるから通るのに苦労した。あれは丸い形で踏みそうになる程小さい。
「あの、掃除ロボット結構頭いいよね。」
「そうじゃなくて……とにかく、今日から私はちゃんと働きます。自分の宿代ぐらい自分で出してみせます。」
毅然とした表情で彼女は宣言する。一体何が彼女をそこまで突き動かしているのだろう。
「ちなみに何する気?」
「……決まって無いです……。冒険者なら私でも出来るかも……。」
ミーラのスキルって確か『小さな幸運』だった。……心配だな特に戦闘能力も俺と同じで無さそうだし……何とかしないと。
「冒険者を甘く見ない方が良いわよ。」
そんな事を考えているとアイスが話に入ってきた。アイスも朝食を食べに来たのだろう。彼女の用事はもう終わったはずなのだが何故まだ残っているのか?
「そ、そんなに難しいんですか……。」
「仕事自体は難しくないんだけど、命を張る職業だから危ないわよ。ハイリスクハイリターンの代表的な職業ね。」
絶対やらない。俺は危険な仕事は不向きだ。だからミーラ、冒険者はやめた方が良いよ。アイスがいるから口には出さないが俺は彼女に目を見て訴える。
ミーラはアイスと俺を見比べた後にこう切り出した。
「それでもアイスさん……私に冒険者のやり方を教えて下さい。」
「……そうまでして自立したいの?」
「はい。頼ってばかりだと駄目なんです。」
完全に二人の世界だ……。俺は二人の容姿を改めて見る。今までそこまで気にした事は無かったが二人共相当容姿は良い方だ。特にミーラは猫耳や尻尾が感情を伝えてくれるから可愛いし分かりやすい。現に今、アイスが冒険者のやり方を教えると伝えると尻尾と耳がぴょこぴょこしている。一方アイスは落ち込んでいた俺を励ましてくれた。行動原理は全然分からないけどアイスは恐らくいい人だ。
「そうね……せっかくだからユータとミーラさん一ヶ月でどちらが多く稼げるか勝負したら?」
前言撤回。俺がここ数日、何の仕事もして無いのがバレてしまう。アイスは小悪魔な笑みを浮かべて俺を見る。俺もアイスにカウンターを与える。
「どうせならアイスも入れて三人で競争しないか?その方がフェアだ。」
「いいわよ。受けて立つわ。」
何だと……動じなかった。え?まさかアイスって俺なんかよりも遥かに稼げる伝説の冒険者だったりするの?とてもそうは見えない。
「負けた人は勝った人の言う事を何でも一つきくのはどうですか?」
彼女は正気とは思えない提案をしてくる。ミーラとアイスはプラチナの鉱山でも発見したのだろうか?
「良いわね。ユータもそれで良い?」
「あ、うん……。」
アイスの有無を言わさぬ口調に俺はただうなずいた。
通りを歩く。はぁ……。冒険者がどれくらい稼げる職業かは知らないがあそこまで自信があるってことは何か秘策があるのだろう。そもそも現在の俺の収入は基地にあった胡椒を売って得た金貨数十枚とAK-47とM1エイブラムスの白金貨十枚……。これは……確実性のある定期的な収入が欲しいな。
目指すは不労所得だな。何もしないでお金が入ってきたら最高だ。その為にはやはり武器を売る場所とか色々な整備が必要だ。
俺は大通りをさまよう。何も良いアイディアが思いつかない。石畳の道を歩いてくるとある看板が目に止まった。『商業ギルド』の文字が大きく書かれている。大きな石の柱が建物の歴史を感じさせる。俺は一人で中に入る。ミーラ達は冒険者ギルドに行ったしちょっとした対抗心だ。
果たしてどんな所だろうか?俺は好奇心で重厚な扉を開ける。静かだ……。俺の足音が建物全体に響く。建物は石造りで厳かな雰囲気だ。
「登録ですか?」
「そうです。手続きをお願いします。」
「分かりました。」
受付の人はしばらく経って二枚の紙をこちらに差し出して必要事項への記入を求めてきた。主な項目は商会名と資本金と所在地そして主な事業内容だった。名前は悩んだがそれ以外はスムーズに書けた。
「では確認をします。」
「商会名はフロント兵器製造商会でよろしいですね。」
「はい。」
「資本金は……白金貨十枚!?失礼ですが……公的な場での嘘は立派な犯罪になりますよ。」
俺は無言で白金貨を出す。まぁこの年で白金貨なんて普通は持ってないよな。俺の方が特殊だ。
「ええ!?し、失礼しました。では所在地の確認を……。」
受付の人の手が止まる。無理もないこのフロントの地から遠く離れた場所だ。
「まさかこの場所は……。まだ地図に載っていない島!」
「あなたが見つけたんですか?またあなたはフロント帝国の民ですか?」
早口で受付さんは聞いてくる。俺はうなずく。今更別の国に行く気も無い。まだフロント王国と帝国は分裂して争ってはいるが直に内戦も終わるだろう。
「分かりました記録しますね……。」
「これは我々が今使っている物より遥かに正確な地図です。お返しします。」
「分かっているとは思いますが、発見した人が島を所有します。その島はあなたの物です。」
不法占拠とかではなくて良かった……。仮に不法占拠していたなら土地を買うか借りるなりして何とかしないとならない。
「あんな外洋の島にたどり着く何て相当苦労されたのですね……。」
受付の人は心配してくるが俺はほとんど苦労していない。気まずいので目をそらす。だが良い事を聞いた。地主になるつもりは無いが島を見つけたらちょくちょく報告しよう……。いや、世界地図は既に完成していたんだった……。面倒だから次の機会にしよう。
「では事業内容ですが……武器の製造、販売、輸送でよろしいですね?」
「問題ないです。」
「では今日よりフロント兵器製造商会が設立されました。」
「あなたの幸運をお祈りします。」
最後の挨拶はどこか教会のものと似ていた。俺は礼を言い席を立つ。さてまず事務手続きを済ませたから次は従業員だ。
「ふと、思ったんですよ。私って現在無職じゃないですか?」
「そうだね。大丈夫俺が養うよ。」
彼女は深刻そうに俺に打ち明ける。普通に暮せば一生安泰な程のお金があるから正直、俺にとってはたいした問題ではない。彼女は一瞬嬉しそうにしたが首を振って真顔に戻った。
「ユータ様に甘えているとダメ人間にされそうです。」
「…………確かに。」
適当に相槌を打つ。というかミーラがダメ人間だ何て一度も思った事が無い。もし彼女がそうなら俺は人間と認められるかも怪しい。
「そこでですね、私今日から働こうと思います。」
労働?働く?目の前にもっと楽な道があるのに自分を律せるミーラは絶対ダメ人間じゃない。金貨を賭けても良い。彼女は俺の反応を伺っている、
「……、俺が雇うよ。それでこの話は解決する。」
「全然してないです。第一、私が担保だった時にも役に立ててたか怪しいじゃないですか。」
「え?そうなの?」
「はい……私とユータ様で島にいる時、少しは役に立とうと思って廊下を掃除してたんですよ。」
全然知らなかった。多分その時は俺は寝ていた気がする。正直、俺にとってはたいした問題ではない。ミーラは偉いな。
「そうしたら、隣で丸い機械が私よりも掃除してたんですよ。」
あぁ自動掃除ロボね。基地にそんな物もあったな。たまに廊下を歩いてるから通るのに苦労した。あれは丸い形で踏みそうになる程小さい。
「あの、掃除ロボット結構頭いいよね。」
「そうじゃなくて……とにかく、今日から私はちゃんと働きます。自分の宿代ぐらい自分で出してみせます。」
毅然とした表情で彼女は宣言する。一体何が彼女をそこまで突き動かしているのだろう。
「ちなみに何する気?」
「……決まって無いです……。冒険者なら私でも出来るかも……。」
ミーラのスキルって確か『小さな幸運』だった。……心配だな特に戦闘能力も俺と同じで無さそうだし……何とかしないと。
「冒険者を甘く見ない方が良いわよ。」
そんな事を考えているとアイスが話に入ってきた。アイスも朝食を食べに来たのだろう。彼女の用事はもう終わったはずなのだが何故まだ残っているのか?
「そ、そんなに難しいんですか……。」
「仕事自体は難しくないんだけど、命を張る職業だから危ないわよ。ハイリスクハイリターンの代表的な職業ね。」
絶対やらない。俺は危険な仕事は不向きだ。だからミーラ、冒険者はやめた方が良いよ。アイスがいるから口には出さないが俺は彼女に目を見て訴える。
ミーラはアイスと俺を見比べた後にこう切り出した。
「それでもアイスさん……私に冒険者のやり方を教えて下さい。」
「……そうまでして自立したいの?」
「はい。頼ってばかりだと駄目なんです。」
完全に二人の世界だ……。俺は二人の容姿を改めて見る。今までそこまで気にした事は無かったが二人共相当容姿は良い方だ。特にミーラは猫耳や尻尾が感情を伝えてくれるから可愛いし分かりやすい。現に今、アイスが冒険者のやり方を教えると伝えると尻尾と耳がぴょこぴょこしている。一方アイスは落ち込んでいた俺を励ましてくれた。行動原理は全然分からないけどアイスは恐らくいい人だ。
「そうね……せっかくだからユータとミーラさん一ヶ月でどちらが多く稼げるか勝負したら?」
前言撤回。俺がここ数日、何の仕事もして無いのがバレてしまう。アイスは小悪魔な笑みを浮かべて俺を見る。俺もアイスにカウンターを与える。
「どうせならアイスも入れて三人で競争しないか?その方がフェアだ。」
「いいわよ。受けて立つわ。」
何だと……動じなかった。え?まさかアイスって俺なんかよりも遥かに稼げる伝説の冒険者だったりするの?とてもそうは見えない。
「負けた人は勝った人の言う事を何でも一つきくのはどうですか?」
彼女は正気とは思えない提案をしてくる。ミーラとアイスはプラチナの鉱山でも発見したのだろうか?
「良いわね。ユータもそれで良い?」
「あ、うん……。」
アイスの有無を言わさぬ口調に俺はただうなずいた。
通りを歩く。はぁ……。冒険者がどれくらい稼げる職業かは知らないがあそこまで自信があるってことは何か秘策があるのだろう。そもそも現在の俺の収入は基地にあった胡椒を売って得た金貨数十枚とAK-47とM1エイブラムスの白金貨十枚……。これは……確実性のある定期的な収入が欲しいな。
目指すは不労所得だな。何もしないでお金が入ってきたら最高だ。その為にはやはり武器を売る場所とか色々な整備が必要だ。
俺は大通りをさまよう。何も良いアイディアが思いつかない。石畳の道を歩いてくるとある看板が目に止まった。『商業ギルド』の文字が大きく書かれている。大きな石の柱が建物の歴史を感じさせる。俺は一人で中に入る。ミーラ達は冒険者ギルドに行ったしちょっとした対抗心だ。
果たしてどんな所だろうか?俺は好奇心で重厚な扉を開ける。静かだ……。俺の足音が建物全体に響く。建物は石造りで厳かな雰囲気だ。
「登録ですか?」
「そうです。手続きをお願いします。」
「分かりました。」
受付の人はしばらく経って二枚の紙をこちらに差し出して必要事項への記入を求めてきた。主な項目は商会名と資本金と所在地そして主な事業内容だった。名前は悩んだがそれ以外はスムーズに書けた。
「では確認をします。」
「商会名はフロント兵器製造商会でよろしいですね。」
「はい。」
「資本金は……白金貨十枚!?失礼ですが……公的な場での嘘は立派な犯罪になりますよ。」
俺は無言で白金貨を出す。まぁこの年で白金貨なんて普通は持ってないよな。俺の方が特殊だ。
「ええ!?し、失礼しました。では所在地の確認を……。」
受付の人の手が止まる。無理もないこのフロントの地から遠く離れた場所だ。
「まさかこの場所は……。まだ地図に載っていない島!」
「あなたが見つけたんですか?またあなたはフロント帝国の民ですか?」
早口で受付さんは聞いてくる。俺はうなずく。今更別の国に行く気も無い。まだフロント王国と帝国は分裂して争ってはいるが直に内戦も終わるだろう。
「分かりました記録しますね……。」
「これは我々が今使っている物より遥かに正確な地図です。お返しします。」
「分かっているとは思いますが、発見した人が島を所有します。その島はあなたの物です。」
不法占拠とかではなくて良かった……。仮に不法占拠していたなら土地を買うか借りるなりして何とかしないとならない。
「あんな外洋の島にたどり着く何て相当苦労されたのですね……。」
受付の人は心配してくるが俺はほとんど苦労していない。気まずいので目をそらす。だが良い事を聞いた。地主になるつもりは無いが島を見つけたらちょくちょく報告しよう……。いや、世界地図は既に完成していたんだった……。面倒だから次の機会にしよう。
「では事業内容ですが……武器の製造、販売、輸送でよろしいですね?」
「問題ないです。」
「では今日よりフロント兵器製造商会が設立されました。」
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