異世界の死の商人

ワナワナ

第四話 ミーラの願いと死の商人の答え



「ユータ様こ、これはな何でしょうか?」


 ミーラの少し震えた手が空港全体を指す。時間は星が出る頃で空港の誘導灯が光っている。真っ直ぐに滑走路の上に並んだ誘導灯。それに沿ってオスプレイは格納庫へ移動している。ミーラのこれは一体何を示しているのか、俺には分からない。焦らないでゆっくり説明していけばいい。


「まぁそれよりご飯にしよう、ハンヴィー。」


 誘導灯に劣らない明るさの2つの灯りがエンジン音と共に近づいてくる。遠くからでも俺の命令を聞き取ってくれる。ミーラは余りの環境の変化に戸惑っている。俺がハンヴィーのドアを開けて乗っても彼女は乗ろうとしない。車も空港も初めて見るのだろう。


「乗らないの?別に大丈夫だから乗ってみて。」
「あなたは一体何者なんですか?武器商人だとしても、これはおかしすぎます。村に税を取りに来る貴族様もこんな物は持っていませんでした。」


 ミーラは再び質問をする。何者なのかは俺が知りたいくらいだ。俺は誰で、何の役割を持ってここに来たのか知りたい。


「武器商人か死の商人それ以上でもそれ以下でもない。さぁ乗って、ご飯にしよう。」
「…………。答えてくれないんですね。分かりました。私、信頼されるように頑張りますから。」


 ミーラは分かってなさそうな返事をした。彼女の手が服の裾を掴んでいる。それは悔しさかはたまた恐怖か憤りかいずれにせよ、俺への評価は変わっていることだろう。だが俺にはそのぐらいが丁度いい。彼女は助手席に無事座った。ただ助手席のドアを使わず運転席をまたいで助手席に行ったのは俺の指示不足だ。今度使い方を教えよう。


「これは馬車みたいに移動するんですか?」
「もちろん。こいつは俺の最初の武器なんだ。ハンヴィー、近くの食堂へ向かってくれ。」
「今度はちゃんと答えてくれましたね。」


 にこーっと彼女は笑う。俺が答えた事がそこまで嬉しいのだろうか?いや、目まぐるしく彼女の表情が変わっているのはきっとやけくそとか、もうどうにでもなれみたいなそういう感情のせいだ。そしてエンジン音で車が俺の命令に答える。やがて少し走ってから誘導灯のある滑走路を離れて空軍基地の食堂らしき所で車は止まった。電気が消えていて暗く建物全体は見えそうにない。ここに食堂があるのか?


「ユータ様、こんな所に食堂があるのですか?」
「それが俺にも分からない。探すのを手伝ってくれ。」


 ミーラは凄く不思議そうな顔をして俺の事を手伝ってくれた。建物内は暗く一メートル先は真っ暗だ。ほとんど何も見えない。俺が壁に手をついて手探りで進もうとすると彼女が手を差し伸べる。


「ユータ様、多分こっちかと。」
「あ、ありがとう。」


 さっきは怖がったり、今度は恐怖何て欠片も無さそうだ。というかこの暗闇で見えているのか、それとも音で先を見通しているのかどちらでも人間離れしている。
 彼女の手は俺と同じくらいの大きさだった。星明りも無い中彼女に手を引かれる。彼女は食堂がどんな場所か知っているのだろうか?スイッチさえ押してくれれば良いのだが。とりあえず武器使役のスキルは建物にも使えるか試してみよう。この暗闇ではスイッチも見つけられない。


「空軍基地の全ての建物は電気をつけよ。」
「っ……!」


 僅かな時間で、眩い光が俺の目に飛び込んできた。急な光で前がみえない。目を閉じておけばこんな事にはならなかった。俺が目を押さえているとミーラも同じだったようで俺を巻き込んで後ろへ倒れた。ここで支えられれば格好良いが残念ながら俺と彼女の体格的な違いは少ない。


「ごめんなさい、大丈夫ですか?」


先に立ち上がったミーラが手を差し伸べてくれる。彼女がスカートなので気恥ずかしいが俺は手をとって立たせてもらった。


「ありがとう。突然灯りをつけて悪かったごめん。」
「今度は前もって言ってくださいね。」


 ミーラの声音は呆れの感情が入っているように聞こえた。二人で周りを見渡す。ビンゴ。ここは食堂だ。長いテーブルが沢山並んでいる。これだけあるとどこに座るか悩む。


「食堂は料理を提供せよ。」


不可能な命令、エラーコード5命令が武器の概念から離れすぎています。
頭の中で無機質な声が響く。どうやらこの命令は駄目らしい。どうしよう。またレーションでも食べるか?缶詰は美味しいけど飽きるんだよな。


「ミーラは料理って作れる?」
「え、えーと一応作れます。人並みですが。」


 彼女は少し困ったように答えた。猫耳も垂れていて困った様子を表している。お前が作れとか言われたら何も言い返せないから困る事はよく分かる。


「でも、村のみんなは何故か私に料理を余り作らせてくれなくて。一人のときにしか作らなかったです。」


 まぁ食べてみないと分からないよね。試してみないと。どんな兵器も使わないと価値がわからないし。美味しすぎて滅多に作らせなかった可能性も一万分の一くらいあるでしょうきっと。


「なら、一緒に作ろう。俺はほとんど作ったことは無いから教えてくれ。」


 こくんと彼女はうなずく。何か覚悟を決めた顔だ。俺とミーラは厨房を探す。まぁすぐに見つかった。学校の給食室を思い起こすような大型の調理器具ばかりだ。全然使い方がわからない。だが探して見ると普通の調理器具も見つかった。これで料理が出来る。


「ユータ様、これはなんですか?」
「これは、胡椒だね。そう書いてある。」


 どうやら彼女は日本語が読めないらしい。ミーラはまるで金や銀でも扱うようにそっとそれをもとに戻した。いやそこまで高い物でも無いから


「こ、こんな高い物をたくさん持ってる何て……。」


 ミーラの一人言が聞こえた。もしかしたら胡椒の価値は俺が思っているよりも高いかもしれない。昔は金と同等何て地球でも言われていたし、もしかしたらあり得るかも。




 結論から言うと料理は出来た。ぎりぎり食べられるレベルだ。調味料はすごいねこれが美味しく感じられる。最初は本当に食べれるか疑問だったけど何とかなる物だ。調味料は凄く美味しい。まるで調味料を食べているようだ。


「すいません……。」
「謝らないで良いよ、俺も上手い訳ではないから。」


 目の前には缶詰のご飯と二人で作ったおかずが並んでいる。二人共生活力が皆無だ。食堂からはコントロールタワーの灯がみえる。空軍基地で一番高い建物だ。


「さてユータ様、そろそろ教えてくれますか。」
「約束だからね教えるよ。………………………。」


 俺は気づいたらここにいた事。他に人はいない事。ここが無人島であること。スキルの事ほぼ全てを話した。ミーラは途中までは質問をかぶせていたが最後には聞き役に徹していた。


「では、私の番ですね。私、ミーラは早くに親を無くして村のみんなに助けられて生きてきました。でも重税や借金のせいで村がジリ貧になっていくのが肌で感じられました。全てはあのワイバーンのせいです。だから倒してくれたあなたに感謝しています。


村を救ってくれてありがとうございます。
それからどうかお願いです、村のみんなをそのスキルで助けてくれませんか?」
「救えるものは救うよ。まだ契約は終わってないからね。後、十九丁村に届けないといけないから。」


彼女の耳がぴょこぴょこと嬉しそうに動いている。村のみんなを俺が見捨てていない事を喜んでいる。俺は彼女にこう提案する。


「所でさ……他の基地も見てみたくない?」
「もちろんです。どうか見せてください。」


 食堂から見える管制塔。それはさながら道を示す灯台にも見えた。彼女の希望が今、灯台の光に照らされて暗闇の中を進んでいく。13m先も見えない暗闇の中を彼はただ歩き始めた。



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