彼女たちを守るために俺は死ぬことにした
11/6(金) 小鳥遊知実②
………………
…………
……
「…………」
「知実くん、学校に行かなかったの?」
「……一応聞くけど、怪我は?」
「尻もちついたから、お尻にあざができてるって聞いたくらいかな。あはは、かっこ悪い〜」
警察に聞いて、電車で病院にかけつけると、処置室の長椅子に座っていたいちごとすぐに会わせてもらえた上に楽しく会話もできている状態だった。
「現場では、トラックに轢かれてぺちゃんこになったって聞いんだけど」
「確かに派手に轢かれて派手に飛んだっぽいけど、着地がよかったからすぐに退院できるって。あ、そういえば、カバンは轢かれて使い物にならないって言われたかも」
使い物にならない……って、そっちの話かい!
「は〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
一気に脱力してその場にしゃがみ込む。まじでよかった……。
「と、知実くん、なんだか心配かけたみたいでごめんね。そんな大事になってるとは知らなくて……」
おろおろと気遣ういちごを睨みつける。
クッソ、心臓が止まるかと思ったし!
なんか道端で叫んじゃったし!
絶対に近所の人からなんか言われるやつだよ!!
あーーーーもう!!!
睨みつけたついでに、ほっぺたを両端から包んで潰してやった。
「ふっざけんな!! お前にもしものことがって、どんだけ心配したか!!」
「ふぉ、ふぉめん……」
「お前がいなくなるって思ったら、すっげー後悔したんだよ!! だから、俺は俺の思うままにします! もう、どうなっても知らんからな!!」
「ふぃ……?」
涙目になったいちごの頬から手を離し、抱き寄せた。
「お前のこと、好きなんだよ!」
胸のつっかえがするりと抜けたような感覚がした。スッキリはした! だけど、もう引き返せない。
野中が言っていたように、好きな気持ちは抑えられるもんじゃなかった。あのときはなんで男同士でキモいこと喋ってんだよと思ったけど、結局、答え合わせになったよな。
「……えーーーっ!? 嘘、なんで?」
「なんでじゃねえよ、気づくだろ普通」
「だって振られたよね、あたし」
「う、それはマジで本当にスーパーごめんなさい。俺が言うのもなんだけど、苦しかったよね……」
折れるんじゃないかってくらい、強く抱きしめる。いちごはそれでも文句も言わずに、されるがままでいてくれた。
大切だから背負わせたくなかった。けど、突然彼女を失うって思ったとき、もっと一緒にいたい気持ちが大きくて、あのとき感じたのは100%の後悔だったから。
俺も自分と向き合いたいと思った。
「……あと出しじゃんけんだから嫌だったら言って。でも本音はそばにいて支えて欲しい!」
「……? 知実くん? なにがあったの……?」
ただ俺を心配してくれる優しい声。一度、その体を離して向き合った。
「今から病気のことを話すよ。ずっと言えなくて、ごめん」
いちごは驚いてはいたけれど、すぐにこくりとうなずき、俺の手を取ってくれた。
愛しさと苦しさがごちゃ混ぜの気持ちであふれそうだ。
俺なんかハイ入ってるかもしんない。
「俺、余命宣告されてる病気で、リミットももうあとわずかってところまで迫っていて。だからせっかく告白してくれたのにあんな態度取ってしまったんだ。ごめんね」
「……え? よ、よめい……?」
「俺だと、ずっといちごのそばにいてあげられないから」
「待って、待って待って、頭おいつかない! ヨメイってなに? なんで?」
いちごの顔からすっと赤みが消えていく。
「……貧血じゃなかった?」
「うん」
泣くかと思っていた。でも、いちごは俺の目を見てなにか考えた様子だった。
そしてきゅっと口を一文字に結んでから、取ってくれていた手を離して座り直した。
「……ごめん、ちょっと落ち着くね。最初からきちんと話して。全部聞いてからショック受ける」
「お、おう。わかった」
「うん。隣にちゃんと座って」
「うん」
腰を落ち着けて、状態について話した。このことは家族のほかに、野中と音和が知っていることも。
「もう誰にもこんなに重い話を背負わせるつもりはなかった。でも、いちごが突然死ぬと思ったら、我慢していたこと全部が後悔として押し寄せてきて、無理だった——」
「知実くん……話してくれてありがとう。それ、あたしもだ」
涙をためていたけれど、
「もうなんだよー、知実くんって人にはおせっかい焼くのに、自分のこと言わないんだもん。……ずっと頑張ってたんだね、そっか。気づかなくてごめんね。これからはそばにいてもいい?」
「いちごは、それでもいいの?」
「当たり前だよ。死んじゃうから好きじゃないって、それはない!」
彼女は毅然としていた。
…………
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「…………」
「知実くん、学校に行かなかったの?」
「……一応聞くけど、怪我は?」
「尻もちついたから、お尻にあざができてるって聞いたくらいかな。あはは、かっこ悪い〜」
警察に聞いて、電車で病院にかけつけると、処置室の長椅子に座っていたいちごとすぐに会わせてもらえた上に楽しく会話もできている状態だった。
「現場では、トラックに轢かれてぺちゃんこになったって聞いんだけど」
「確かに派手に轢かれて派手に飛んだっぽいけど、着地がよかったからすぐに退院できるって。あ、そういえば、カバンは轢かれて使い物にならないって言われたかも」
使い物にならない……って、そっちの話かい!
「は〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
一気に脱力してその場にしゃがみ込む。まじでよかった……。
「と、知実くん、なんだか心配かけたみたいでごめんね。そんな大事になってるとは知らなくて……」
おろおろと気遣ういちごを睨みつける。
クッソ、心臓が止まるかと思ったし!
なんか道端で叫んじゃったし!
絶対に近所の人からなんか言われるやつだよ!!
あーーーーもう!!!
睨みつけたついでに、ほっぺたを両端から包んで潰してやった。
「ふっざけんな!! お前にもしものことがって、どんだけ心配したか!!」
「ふぉ、ふぉめん……」
「お前がいなくなるって思ったら、すっげー後悔したんだよ!! だから、俺は俺の思うままにします! もう、どうなっても知らんからな!!」
「ふぃ……?」
涙目になったいちごの頬から手を離し、抱き寄せた。
「お前のこと、好きなんだよ!」
胸のつっかえがするりと抜けたような感覚がした。スッキリはした! だけど、もう引き返せない。
野中が言っていたように、好きな気持ちは抑えられるもんじゃなかった。あのときはなんで男同士でキモいこと喋ってんだよと思ったけど、結局、答え合わせになったよな。
「……えーーーっ!? 嘘、なんで?」
「なんでじゃねえよ、気づくだろ普通」
「だって振られたよね、あたし」
「う、それはマジで本当にスーパーごめんなさい。俺が言うのもなんだけど、苦しかったよね……」
折れるんじゃないかってくらい、強く抱きしめる。いちごはそれでも文句も言わずに、されるがままでいてくれた。
大切だから背負わせたくなかった。けど、突然彼女を失うって思ったとき、もっと一緒にいたい気持ちが大きくて、あのとき感じたのは100%の後悔だったから。
俺も自分と向き合いたいと思った。
「……あと出しじゃんけんだから嫌だったら言って。でも本音はそばにいて支えて欲しい!」
「……? 知実くん? なにがあったの……?」
ただ俺を心配してくれる優しい声。一度、その体を離して向き合った。
「今から病気のことを話すよ。ずっと言えなくて、ごめん」
いちごは驚いてはいたけれど、すぐにこくりとうなずき、俺の手を取ってくれた。
愛しさと苦しさがごちゃ混ぜの気持ちであふれそうだ。
俺なんかハイ入ってるかもしんない。
「俺、余命宣告されてる病気で、リミットももうあとわずかってところまで迫っていて。だからせっかく告白してくれたのにあんな態度取ってしまったんだ。ごめんね」
「……え? よ、よめい……?」
「俺だと、ずっといちごのそばにいてあげられないから」
「待って、待って待って、頭おいつかない! ヨメイってなに? なんで?」
いちごの顔からすっと赤みが消えていく。
「……貧血じゃなかった?」
「うん」
泣くかと思っていた。でも、いちごは俺の目を見てなにか考えた様子だった。
そしてきゅっと口を一文字に結んでから、取ってくれていた手を離して座り直した。
「……ごめん、ちょっと落ち着くね。最初からきちんと話して。全部聞いてからショック受ける」
「お、おう。わかった」
「うん。隣にちゃんと座って」
「うん」
腰を落ち着けて、状態について話した。このことは家族のほかに、野中と音和が知っていることも。
「もう誰にもこんなに重い話を背負わせるつもりはなかった。でも、いちごが突然死ぬと思ったら、我慢していたこと全部が後悔として押し寄せてきて、無理だった——」
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涙をためていたけれど、
「もうなんだよー、知実くんって人にはおせっかい焼くのに、自分のこと言わないんだもん。……ずっと頑張ってたんだね、そっか。気づかなくてごめんね。これからはそばにいてもいい?」
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