彼女たちを守るために俺は死ぬことにした

アサミカナエ

11/5(木) 小鳥遊知実①

 カバンを持って玄関を開けると、いつも通りいちごが待っていてくれていた。


「きゃっ!」


 ぼんやりしてたんだろうか。俺を見て驚き、叫び声を上げる。自分の反応を恥じるように、ピシッと背筋を伸ばして真正面に向き直った。


「あ、おはよ」
「うん、おはよう知実くん! やー今日も晴れたね、秋晴だねえ〜! そういえば今日の英語の課題さ〜」


 そして気まずいのだろうけど、とても気丈に振舞ってくれていた。


「あれ? 音和ちゃんも出てきたよー。今日は早くて優秀だねえ! おはよう、音和ちゃんっ!」
「お、おはよ」
「うす」
「うん……」


 ……色々と気まずい。
 色々と気まずいメンバーだけど、それでも俺たちは。


「んじゃちょっと早いけど、行きますかー」
「うんっ!」
「おっけー」


 この日常を守るために。
 お互いに、いつも通りを装って。肩を寄せ合い登校するしかないのだ。


「知ちゃん、時間あるしお菓子買って。……い、いちごちゃんも買ってもらおっ」
「音和ちゃん、今……! うん! コンビニで棚買いしてもらおうね!」
「なんで俺の金なの!?」
「へえぇ。棚買いしてくれないんだー?」


 あたしたち誰かのおかげで傷ついてるんですけど?みたいなジト目が飛んでくる。


「いちご、お前ってばそういうやつだったのか……」


 本来のいちごちゃんは、割と強い人のようですお母さん。



┛┛┛



 昼休み、虎蛇に招集があった。行く前に用事があったから、ついでに隣の職員室に寄ると、担任に捕まって昼休みが半分潰えた。
 昼休み後半、弁当を持って一応虎蛇に顔を出したけど、みんなの「使えねえ」みたいな視線にいたたまれなくなってそのままドアを閉めた。


「今から屋上行く?」


 ドアから野中がひょっこりと顔を出す。
 その後ろでみんなが俺たちを「不良だ」と口々に責めるが、そうだよわりーかよ。で一蹴して、虎蛇をあとにした。

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