彼女たちを守るために俺は死ぬことにした

アサミカナエ

10/31(土) 小鳥遊知実

 今日は11月からの入院についての話を聞きに来たのだが、美原さんが先週の検査のカルテを見ながら首をひねっている。


「……」


 何か言われるのだろうか。固唾を飲んで見守ることしかできない。

 余命宣告を受けてからもうすぐ半年。
 あっという間だったけど、やりたいことはやり尽くしたと思う。


「小鳥遊、必ず入院はしてもらうんだけどね」


 カルテから顔を上げて、美原さんは苦笑した。


「不思議と数値が安定しているのよ。まあ悪いにしては悪くないってことなんだけど」
「はあ……」
「学校がよっぽど楽しいのかしら。タフねえ」


 結構無茶はしてきたけど、経過は悪くないらしい。


「入院日は、海外からドクターが来る日に合わせようと思って」


 スケジュールや入院についての説明がされる。
 とうとう明確なXデーが出た。
 メモを取りながら、残り時間までどう過ごそうかと考えた。
 でも特になにかするわけでもなく、普通の日々を過ごすんだろうな。


「でも次倒れたら、日程繰り上げて即入院だからね」
「あ、はい」


 ……昨日までのはノーカンだよな? 黙っとこ。


「小鳥遊」


 名前を呼ばれて、メモから顔を上げた。


「……この半年どうだった? あなたが言ってた心残りは減らせたの?」


 スクエアの眼鏡の奥に、穏やかなまなざしを感じた。


「……うん。もうほぼほぼ片付けてきたよ」
「そう」


 美原さんは頷いた。


「……優秀じゃないの!」


 そう跳ねるように強く言ってくれた美原さんの眼鏡の奥の瞳が、蛍光灯の反射なのか光っているように見えた。

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