彼女たちを守るために俺は死ぬことにした

アサミカナエ

10/30(金) 日野 苺③

 
┛┛┛



 いつもの俺たちの日常が進んで行く。
 あと俺が何回受けられるかという授業も、だるそうなやつは、時計を何度も恨めしそうに見上げている。
 そんで俺は朝から頭に血がのぼったからか、めちゃくちゃ体調が悪い。
 移動教室で化学実験室にいるけど、完全に薬を飲みそびれた……。
 体調が悪いのは、実験グループが気まずいっていうのもあるんですけどね。

 隣には野中が俺に寄りかかっていて、向かいの席では七瀬といちごが並んで座っている。
 1学期初めの席を引き継いでいてこの班なんだけど、野中はもともと違う班だが、勝手にここにいるんだよな。先生はもう注意すらしないし。


「そんなベタベタされてるのに、なっちゃんのポーカーフェイスってもはや芸術だよね……」


 手際よく実験の準備をしながら、七瀬が呆れるように言った。
 理数系が得意と言っていただけあって、いつも実験は率先してやってくれるから助かっている。


「これは慣れだね」


 野中を押し戻す元気もなく答えた。
 おー。脈と合わせて頭痛のDTMが入ってきたぞ……。


「まったく、ノナカは甘えたすぎない?」
「なっちゃんにだけな〜」


 夏は暑苦しいけど、今の時期ならオッケーです。


「うちの弟も知実くんの膝の上に乗りたがるんだけど、野中くんってもしかして末っ子ちゃん?」


 斜め前でいちごが首を傾げながら、とんでもねえことをブッコんできた。プッと七瀬が吹き出し、口元を隠して笑いをこらえる。


「ちょっ(笑)。っふふふ、そーだよねーたしか! っくくく、いっちーサイコーなんだけどっ」
「は? 家でするかよアホ! なっちゃんだからだっつーの!!」


 ああー、野中が暴れる。うざいー。


「こらー! A組はうるさいな。ちゃんと実験できたかー?」


 先生に怒られ、顔を背ける七瀬だが、それでもずっと笑いをこらえきれてなかった。


「日野それ天然で言ってるから、まじでタチ悪いんですけどー! あーヤダヤダ!」


 野中が暴れる。
 あ、これはダメなやつ……。
 今までクラスではうまく頑張ってたのに、こんなところでやってしまった。
 視界がホワイトアウトしていく。


「ってか、なっちゃんも俺に寄りかかりすぎ!」
「……」


 もう、重力にも耐えられなかった。
 ずるりと体がずり落ちて、床へと引き寄せられていく。


「知実くんっ!?」


 いちごの声が聞こえた……気がする。
 額に手を当てられる感覚があり、朦朧としながらも、彼女の顔を見ておきたい一心で薄目を開けた。
 ああ、やっぱり。
 なんだかんだ、いつもいちばんに駆けつけてくれるのって、いちごなんだよなぁ。
 それで安心して、意識を手放した。

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