彼女たちを守るために俺は死ぬことにした
10/26(月) 小鳥遊知実②
┛┛┛
放課後、あまりひとりでいたくなかった。
頭痛はそれなりにはあったけど、野中を誘ってゲーセンに行った。
ひと通り遊んで帰るころには、もうすっかり空は月のターンだった。
二人で電灯が照らす街の中を、帰宅中の社会人の波に逆らいながら駅方面へと歩く。
「ファンスタで本気でゲームしたから、完全に火がついたわー。しばらく通おうかな」
野中が楽しそうに笑っている。
戦略考察を読んでいた俺は、諦めてスマホを下ろす。
「うーん。八代の戦術的なのも必要だなと思ったけど、パズルみたいでムズいよなあ」
「ああいうのは慣れも8割あるから、やり込むしかないなー」
「野中はそれで今までプロと互角に戦えてるから、逆にすげーよ……」
「やだありがと。もっと言って♡」
野中が俺の肩に寄り添うようにくっついてきた。
通りすがりの会社員が、ぎょっとした目で俺たちを見る。すみませんねえ、人目構わずラブラブで。
だらだらと話しながら歩いて、ようやく駅前の通りまで出てきた。
電車通学の野中とは、駅で解散だ。
だったら話すなら今、か。
周りを伺い、一応知り合いがいないのを確認してから、できるだけなんでもない風を装って切り出す。
「あのさ、今かよって感じだけど……早めに言っておくわ」
まっすぐ前を見据えていたけど、緊張して目にはなにも映っていなかった。
「昨日、あのあと、音和に付き合えないって言った」
野中が息を詰める。長く感じる一瞬の沈黙だった。
車が走る音や自分たちの足音とか、外の音がやたら大きく聞こえてくる。
電車が来るのを知らせる音楽が耳に入って、駅の入り口まであと数歩だということに気づいた。
不意に、隣から肩を抱かれるようにして叩かれる。
「お疲れ」
低く落ち着いた声に、涙をこらえて鼻をすする。
ぽんぽん。
「また明日な」
「……おう」
立ち止まると、手も離れた。
そのまま手を上げ、ひらひらと振りながら改札の中へと消える野中の後ろ姿を見送った。
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