彼女たちを守るために俺は死ぬことにした

アサミカナエ

10/14(水) 小鳥遊知実③

 
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 昼休みはみんなで虎蛇に行ってみることにした。文化祭が終わってから初登校の俺は、虎蛇がどうなっているのかまだ知らない。
 みんなに後ろから見守られつつドキドキしながらドアを開けてみると。


「ん?」
「あら♡」


 文化祭前と変わらずそこにいるのは当たり前という顔で凛々姉と詩織先輩がお昼ごはんを食べていたので、なんだかじーんと来てしまった。
 文化祭から1週間半ぶり。ほぼ全員のメンバーと顔を合わせている。そわそわと気持ちが浮つき、つい顔が綻んでしまう。
 今日は音和がいないのは残念だけど、ケンカが勃発しないのは楽っちゃ楽かな。

 さてこの日の雑談は、凛々姉の一声から始まった。


「ところであなたたち来週から修学旅行でしょう? 帰ってきたら虎蛇会でも打ち上げを……と思っているんだけど」


 凛々姉は小さな弁当箱からブロッコリーをつまんで掲げ、俺たちを見回した。


「あー、修学旅行先は来週、台湾だけど……」


 と、俺は言葉を濁しながらいちごを見る。


「知実くんとあたしが修学旅行行かないからー……」
「みんなで日帰りで遊園地でもって話してたんだよ」


 七瀬と野中も肯定の手をあげた。


「んん? 修学旅行、行かないの?」


 凛々姉が信じられないという風に眉をひそめる。そうだよね、高校の大行事だもんね。


「あたしは金銭的に……」
「俺はテスト休んだから、進級のために補習を受けることになりました」
「ウフフフッ。そして俺は、知実カノジョがいないと行く意味ないんで、残ることにしました。エターナル・ラブ!」
「彼女じゃねえ! お前が俺の彼女!!」


 俺たちのくんずほぐれつをスルーし、七瀬が元気よく手を上げる。


「あたしは修学旅行も行くけどー、みんなと遊園地行きたいからファンスタも行く系ー!」
「ん? ファン……スタ?」


 あ。凛々姉の目が光った。


「まあ、楽しそうですね。私、遊園地は小学生の頃に行ったきりです」
「だったら、みんなで行きましょー! 虎蛇会打ち上げもかねて!」
「それは素敵ですね♡」


 いちごと詩織が手を取り合ってキャッキャと話す。やだあの辺りの空気、ちょーかわいー。


「わー、いいねっ! 会長もぜひ……か、会長!?」


 七瀬が声を上ずらせながら、後ろにのけぞった。
 それもそのはず、凛々姉は顔を真っ赤にさせながらフーフーと呼吸を整え、異様なオーラを放っている。
 七瀬が小さな声で囁いてくる。


「なっちゃん、そ、そんなに会長嫌だったのかな?」
「うれしいんじゃない?」
「あれを見て! どこがよ! 現実から目を逸らさないで!」


 目とかキラキラしているし、喜びを気取られないように抑えているのだと思うけど?


「ちょーーーーっと待ったああああ!!!!」


 ガラッ

 はいはい、生徒会ね。
 生徒会長・吉崎いのと、愉快な仲間の八代、鈴見がドアから駆け込んでくる。


「話は聞かせてもらったわ、虎蛇会!!」
「なんっでだよ!!」


 あいつらいつもどこから聞いてんだよ!


「ああ、ごめんなさい。ウチの諜報班がこちらに盗聴器を仕掛けていたようで、それを聞きながら回収に来たところなのだけど」
「サラッと言うけど、めちゃくちゃな犯罪告白してるからな!?」
「でももう盗聴しないわよ? ごめんあそばせ」
「まったく謝られてる感じがしないの、むしろ才能だわ……。で、凛々姉はいいの?」


 面倒になって凛々姉に振る。


「フー、フー……。ん? なぜ生徒会がここに」
「あのすんません。聞いていなかった人がいるんで、もう一度最初からお願いしていいですか。あ、入ってくるところからで」


 なんと、もう一度最初から説明してもらうことになった。
 アホか。

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