彼女たちを守るために俺は死ぬことにした

アサミカナエ

10/14(水) 小鳥遊知実②

 腕組みして考えるけど、全くわからん。


「あれって何?」


 考えるのを諦めて聞き返す。七瀬は顔を引いてぷくっと頬を膨らませ、「本当にわからないの?」とでもいうように黙って俺を責めたあと、また顔を近づけてきた。


「……主張、のアレだよっ」


 あー、音和に告ったやつか。


「こいつ本当に野中のこと好きなんだな」
「は!?!? ちょっと!!!」
「あ」


 心の声が外に出たのに気づいた瞬間、突き出しが見事頬にキマり、「七瀬よ立派な力士になってくれ」と思った。


「本っっっっっ当に、あなたはデリカシーというものを持ち合わせてないよねぇ!?」


 こちとら軽い脳震盪でフラフラしているのに、胸ぐらをしっかり掴んで揺さぶられてますけど、デリカシーさん。


「えーそんなの、本人に直接聞けばいいだろー」
「だって! ノナカ緊張するじゃん」


 もぞもぞしながら、七瀬は下を向く。しおらしいが、俺の胸ぐらは掴まれたままだけどな。


「緊張するって、あいつだぞ? 七瀬は人を見た目で値踏みするようなやつじゃないと思ってたけどなー」
「……っ」


 真っ赤な顔で睨まれる。なんか腹が立ってきた……。


「……あのお、距離近いんすけど。俺のこと好きなの?」
「つまんないギャグ言ってろ!」


 さらに顔を赤くした七瀬に、投げ捨てられた。


「七瀬ちゃんと知実くんって、仲良いよね〜」


 隣の列の二つ前の席で教科書をしまいながら、いちごが微笑ましげに振り向く。


「!? いっちーやめて、全然だから!」
「そうだぞー。俺、暴力女とかやだし」
「は!? あたしに触ってもらってうれしいくせに!」
「痛い痛い! “触る”の概念見直したほうがいいぞ!? 属性がゴリラなら仕方ないけどな!」
「はっあー!?!?」
「あはは、やっぱり〜」
「「ちがうっ!!」」


 いちごはなぜか、前から俺と七瀬のカップリングを信じてるんだよな。でもそこ推してるのお前だけだぞ。


「とにかくっ、さっきの話あとでするからね!」


 さっと耳打ちして、七瀬はいちごに話しかけに行った。
 あーあ。つまんねー。はよ野中来ないかなー。

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