彼女たちを守るために俺は死ぬことにした
9/29(火) 部田凛々子①
今日は放課後、ゴンドラの試運転がある。
レトロマシーンを体育館で動かすと噂がまわり、かなりの生徒が見物に行くと言っているのを聞いた。
「無様な姿を見せて、心配をかけて申し訳なかった。みんながいたからあたしは頑張れたのに、少しでも疑ってしまって、本当にごめんなさい。あたしは最後までこのメンバーと一緒に頑張りたい。そして、みんなにはこれからも支えて欲しいと思ってる」
虎蛇で集まって最初の挨拶は、改めて昨日の謝罪だった。
凛々姉は少し吹っ切れたようで、声に張りがある。それはみんなを安心させるのに充分で、あたたかい拍手が部屋に満ちた。
「それで本日のゴンドラ試運転の件だけど、体育館にはあたしとチュン太が立ち会ってくる」
「仕事を増やすなっつーの。な、凛々姉」
「決まってしまったことは仕方ないわ。あいつらの思考を指定していればよかったのに、むざむざと選択をさせてしまったあたしにも落ち度があるしね」
「さようで……」
「まあ、お手並み拝見といきましょう。動けば問題ないしね」
なんだか楽しそうでなによりです。
「ゴンドラは生徒会のみなさんも見にいらっしゃるのですか?」
詩織先輩が興味を持ったようだ。
「おそらく。いのが許可を出すように仕向けたし、見に来るでしょうね」
「わかりました。そうしましたら私たち、準備をしてから伺いますね♡」
「うんうん! なので二人でごゆっくり〜」
七瀬もこくこくと頷いた。
「一体なにを企んでるのか知らないけど……。体育館で待ってるわ」
めずらしく追求しない代わりに、なぜか凛々姉の顔は紅潮していた。
┛┛┛
体育館に一歩入ると、見慣れた景色とはがらりと変わって、祭感のある装飾で華やいでいた。バタバタと行き交う生徒以外にも、野次馬に来た生徒たちの姿もちらほらと見える。昨日作っていた入場ゲートも、ほぼ完成していてみんなの頑張りが目に見えてわかるのが嬉しかった。
2階通路に視線を移すと、入場ゲートのちょうど上方あたりに人が集まっていた。体育の男性教師と1年の学年主任の2人が布を外されたゴンドラを触っていて、その周りに生徒会の腕章をつけた男が数人いる。
ふと1階で、同じようにゴンドラを見上げていた有志の男子たちがこちらに気づき、中指を立てた。めちゃくちゃ重めの投げキッス(平和的)をしてやると、嫌そうな顔をしてそっぽを向かれてしまった。
「あーーーーーーら! 文化祭実行委員会かっこインテロゲーションマークかっこ閉じるのお二人さんじゃなーい!」
後ろからいつもの声が聞こえた。
「あなたたちも見に来たのかしらあ↑↑」
振り返らなくてもわかるので無視する。
「ちょっと! 挨拶くらいしなさいよね!!」
腹は立つけどこの人、めげないのが逆に可愛く思えてきたわ……。
「聞こえてるわよ、いの。……明るいところで見ると思っていた以上に年季物ね、あれ」
「ええ。だからと言って、動かさないうちに諦めなくてよかったと思うわ。ご覧なさい、みんなの顔を」
吉崎いのが言うように、作業をしている人たちの目は懐かしく新しいおもちゃを見つけたように、大人も子どもも変わらず輝いて見えた。
「凛々子。あなたの判断は間違っていない。でもね、あたしたちは若さがある。イノベーションを起こさないといけないのよ。石橋を叩くのはあたしたちじゃなくて、大人でいい。あたしはその背中を押したいの」
「……あなたにしてはまともっぽいことを言うわね」
「凛々子みたいな人も大事よ。そしてもちろん小鳥遊くんのような向こう見ずな人もね。それで世界はバランスを取っていくんだわ」
さっきまでは日頃の鬱憤を返そうと思ってたのに。今日の生徒会長には、なぜかあまり険を感じない気がして、やりづらさを感じた。
レトロマシーンを体育館で動かすと噂がまわり、かなりの生徒が見物に行くと言っているのを聞いた。
「無様な姿を見せて、心配をかけて申し訳なかった。みんながいたからあたしは頑張れたのに、少しでも疑ってしまって、本当にごめんなさい。あたしは最後までこのメンバーと一緒に頑張りたい。そして、みんなにはこれからも支えて欲しいと思ってる」
虎蛇で集まって最初の挨拶は、改めて昨日の謝罪だった。
凛々姉は少し吹っ切れたようで、声に張りがある。それはみんなを安心させるのに充分で、あたたかい拍手が部屋に満ちた。
「それで本日のゴンドラ試運転の件だけど、体育館にはあたしとチュン太が立ち会ってくる」
「仕事を増やすなっつーの。な、凛々姉」
「決まってしまったことは仕方ないわ。あいつらの思考を指定していればよかったのに、むざむざと選択をさせてしまったあたしにも落ち度があるしね」
「さようで……」
「まあ、お手並み拝見といきましょう。動けば問題ないしね」
なんだか楽しそうでなによりです。
「ゴンドラは生徒会のみなさんも見にいらっしゃるのですか?」
詩織先輩が興味を持ったようだ。
「おそらく。いのが許可を出すように仕向けたし、見に来るでしょうね」
「わかりました。そうしましたら私たち、準備をしてから伺いますね♡」
「うんうん! なので二人でごゆっくり〜」
七瀬もこくこくと頷いた。
「一体なにを企んでるのか知らないけど……。体育館で待ってるわ」
めずらしく追求しない代わりに、なぜか凛々姉の顔は紅潮していた。
┛┛┛
体育館に一歩入ると、見慣れた景色とはがらりと変わって、祭感のある装飾で華やいでいた。バタバタと行き交う生徒以外にも、野次馬に来た生徒たちの姿もちらほらと見える。昨日作っていた入場ゲートも、ほぼ完成していてみんなの頑張りが目に見えてわかるのが嬉しかった。
2階通路に視線を移すと、入場ゲートのちょうど上方あたりに人が集まっていた。体育の男性教師と1年の学年主任の2人が布を外されたゴンドラを触っていて、その周りに生徒会の腕章をつけた男が数人いる。
ふと1階で、同じようにゴンドラを見上げていた有志の男子たちがこちらに気づき、中指を立てた。めちゃくちゃ重めの投げキッス(平和的)をしてやると、嫌そうな顔をしてそっぽを向かれてしまった。
「あーーーーーーら! 文化祭実行委員会かっこインテロゲーションマークかっこ閉じるのお二人さんじゃなーい!」
後ろからいつもの声が聞こえた。
「あなたたちも見に来たのかしらあ↑↑」
振り返らなくてもわかるので無視する。
「ちょっと! 挨拶くらいしなさいよね!!」
腹は立つけどこの人、めげないのが逆に可愛く思えてきたわ……。
「聞こえてるわよ、いの。……明るいところで見ると思っていた以上に年季物ね、あれ」
「ええ。だからと言って、動かさないうちに諦めなくてよかったと思うわ。ご覧なさい、みんなの顔を」
吉崎いのが言うように、作業をしている人たちの目は懐かしく新しいおもちゃを見つけたように、大人も子どもも変わらず輝いて見えた。
「凛々子。あなたの判断は間違っていない。でもね、あたしたちは若さがある。イノベーションを起こさないといけないのよ。石橋を叩くのはあたしたちじゃなくて、大人でいい。あたしはその背中を押したいの」
「……あなたにしてはまともっぽいことを言うわね」
「凛々子みたいな人も大事よ。そしてもちろん小鳥遊くんのような向こう見ずな人もね。それで世界はバランスを取っていくんだわ」
さっきまでは日頃の鬱憤を返そうと思ってたのに。今日の生徒会長には、なぜかあまり険を感じない気がして、やりづらさを感じた。
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