彼女たちを守るために俺は死ぬことにした

アサミカナエ

9/28(月) 部田凛々子⑧

 ドアがガラガラと大きく音を立てて開いた。


「おーっす! え、何なの、入るなって止められたんだけど、なっちゃんと会長、なにしてんの?」


 そこで空気を読まず、ズケズケと部屋に入ってきたのは野中だった。俺たちはゆっくりと振り返り、一体何しにきたのか無言で問う。


「つかお前ら、俺とかほかのやつらが超絶働いてるのに、なんでサボってんの」

「野中、今ちょっとそういう感じじゃ……」

「うるせえ、知るかよ! 俺ね、雨に超濡れたの! 本当は好きな女の前以外では濡れたくない系なの! それなのになにそれ。マジでやる気うせるわーーー。えーーー? 何か反論あるなら言ってくださいーーー? は? つか泣いてんの? っぷーーーーー! あらあら、鬼の部田凛々子さんが泣いてんでちゅかー?ww」


 わざわざ凛々姉の前まで歩いてきて野中が挑発する。
 あー。それはやめたほうが……。


「…………あたしに近づくな、外道」

「あ?」


 どこかで雷が落ち、部屋の電気が切れた。
 驚いて室内を見回していると、暗闇の中ですっと顔を上げた凛々姉の目が光った。
 手にはぼんやり青白く発光する……え、嘘だろ。ま……まさか……。

 妖刀!?

 凛々姉の妖刀(?)が空を切る。
 野中の前髪の先が、バツっと切れて二人の間に散った。


「!?!?」


 あまりにも非現実的な光景に、声が出ない俺。
 腰を落とし、妖刀(??)を振り切った姿勢のまま、凛々姉は肩で息をしていた。


「チュン太……あたしがいなくなった虎蛇に、こいつはいるのか?」

「え、あー……」


 野中は本能的に妖刀(???)を避けたらしいが、背後の机に寄りかかって、なにが起きたかわからないような顔をしていた。


「うん、もちろん! 野中は凛々姉と違って顔が広いし。副会長でもいいかもなー!」

「はあ!? なんの話!?」


 状況を飲み込めない野中が声を上げる。
 刹那、凛々姉が宙を舞い、くるくると横に二回転しながら野中をさらに斬りつける。
 しかし運動神経のいい野中はすぐに対応し、机の上を転がるようにして越え、向こう側へと着地して身をかがめた。


「ふざけないで……! あたしがこんなにも丁寧に丁寧に積み上げてきた虎蛇会を、こいつに汚されるなんてありえない! ならば、ここで息の根を止めるまで!!」

「そうだろ、凛々姉。積み上げてきてんじゃん、ちゃんと!」

「!!」


 前を見据えていた凛々姉の首がぴくりと、後方の俺の声に反応した。

コメント

コメントを書く

「学園」の人気作品

書籍化作品